たかぱん

 だがソロモンは殺した

びっくり聖書解釈

 ダビデからソロモンへという王位継承は、決してスムーズには行われませんでした。ユダ王国の歴史書である『歴代誌』では、どこぞの国のように麗しい継承の姿が描かれているすが、イスラエルの歴史書である『列王記』は真実をありのままに伝えていると思われます。
 ダビデの子の一人アドニヤが、ダビデ王の右腕たる武将ヨアブと、後の預言者エレミヤの祖先となる祭司アビアタルらの支援を得、王位を宣言しました。ダビデの家の実力者であったと思われます。しかし、ダビデ晩年のブレインたる預言者ナタンとは折り合いが悪かった。それでナタンは、バト・シェバ――ダビデの不倫と殺人の当事者――と組み、その子ソロモンを王位に即かせる企みをしました。老齢のダビデに二人で迫り、ダビデに、ソロモンを後継者とするよう言わせたのです。
 その権威を傘に、ソロモンは、ダビデの臨終後、狂ったように敵対者たちを殺戮します。謙虚に従おうとしたアドニヤさえ、言いがかりをつけて殺害しました。祭司アビアタルは、さすがに神に仕える人間として剣にかけることはできないかったのか、追放処分にとどめましたが、武勲を重ねたヨアブでさえ、過去の事柄を根拠に打ち殺しました。
 ここに、再びシムイが登場します。ダビデ王がエルサレム落ちしたときに王を罵ったが、ダビデにより命救われた男です。シムイは、アブサロム亡き後、都入りしたときに誰よりも早くダビデを王として迎えることで許されました。ダビデは臨終直前に、ソロモンに、シムイを殺せと指示したと記されていますが、この記事は怪しいかもしれません。というのも、ソロモンはシムイ一家を、軟禁状態とはいえ、その後も安全に保護しているからです。そして、言いがかりにも似た理由を見つけたそのときに、堂々と(?)シムイを殺害しています。
 自ら犯した罪を悔いたダビデとは対照的に、生まれたときから王位継承権をもっていたソロモンは、実に迷いなく、自分に都合の悪い周辺の者を殺し続けました。これは何を意味しているのでしょうか……。



王がヨヤダの子ベナヤに命じたので、彼は出て行ってシムイを打ち殺した。
こうして王国はソロモンの手によって揺るぎないものとなった。
(列王記上2:46/新共同訳-日本聖書協会)

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