野の花会と統一協会
2002年9月8日

 偶々、私が一階に降りてきたときでした。どうでもいいような用事だったのですが、小テストをさせている間を利用して、ちょっと取りに行っておこう、というものでした。
 と、そのとき、来客がありました。受付のところに若い男が一人、その背後の玄関に若い女が一人残りました。
 男は、手にタオルの入ったようなビニル袋と、チラシのようなものを持っていました。
「福祉ボランティア団体です……」
 窓口には、若い受付職員が三名、男性一人と女性二人がいました。相手の男は、福祉ボランティアのためにそれを買ってくれというふうなことを、マニュアルに従うかのようにまくしたてました。如何なる名目であれ、受付の職員の独断で会社の金を差し出すようなことはできません。それを断ろうとする雰囲気はありありだったのですが、相手は自分の言いたいことだけしか眼中にないようです。タオルだか科学フキンだか知れないような袋をちらつかせながら、チラシ状のパンフレットを開いて説明し始めました。
 明らかに、受付職員は困惑しています。答える言葉は一つしかないのですが、そのタイミングを与えてくれません。私は教室に戻ろうとしたところでしたが、気になって受付の方に近づきました。何が気になったか……ご存じの方は明白だと思います。ボランティア団体がこうした形で個別に物を販売に廻ることはありえないからです。そして、こんなことをするのは、あの団体しかありません。
「そのパンフレット、戴けますか」と私は丁寧に言いました。もしかすると、買ってくれた人にだけ渡すようなものだったのかもしれません。そう大部ではありませんでしたから。しかしそう言われて断れない様子で、一部私に寄越しました。
 一目見て私は、予想が正しいことを知りました。一応パンフレットの表裏に目を通してから、言いました。
「この団体の、母胎は何ですか。つまり、どこがこの野の花会を作っているのですか」
 こうした質問には慣れていないのでしょう。男は一瞬戸惑った様子で、パンフレットの中央を指さして、
「野の花会といいます。場所は東京のここで、ホームページもあります」と言いました。
 ホームページくらいなら、私だって開いています。ホームページがあるというだけで信用してもらえるだなんて考えているのでしょうか。怪しまれているとは直感したようですが、どうもこちらの質問の意味が伝わらなかったようです。私ははっきり尋ねました。
「この団体には、背後の組織があるでしょう。それは何ですか」
「ですから、野の花会というものです」
 まるで、おまえは字が読めないのかというふうな説明です。私は最後に言いました。
「答えになっていませんね。野の花会は、背後にある組織が運営している団体ですよね。あなたはそれを知らないんですか」
「はい。私はそのボランティアで……」
 玄関に待つ女は、私の言葉も聞こえているはずですが、にこにこと表情を崩さずただ立っています。帽子をかぶり、眼鏡をかけているので、その顔はあまりはっきりとは見えません。
 会社なのでお金は出せない、と受付職員が言いました。無駄だと分かったようで、お金をせびりはしませんでしたが、男はこう言って引き下がりました。
「じゃあ、どうかこの野の花会のことを、広めてください」
 私の厳しい眼差しを、さすがの鈍感なこの男も感じ取ったようです。すごすごと出て行きました。女は最後までにこにこ笑顔を絶やすことはありませんでしたが、玄関を出ると、もう用は済んだという感じで、足早に立ち去るのでした。
 彼らの後ろ姿が、ガラス戸の向こうにまだ見えている間に、私は職員たちに説明しました。
「あれ、統一協会です」
 そう説明しても、判然としないところが若さというか、よい育ちをした若者です。怪しいというのは感じたようですが、統一協会がどういうところなのかはよく知らない様子。合同結婚式の話をすると、若い女性職員の一人が思い当たったような反応を示しました。


 パンフレットは、A3を二つ折りにした4ページもので、全面カラーです。それはもう、これ以上ないというくらいの、施設や花々のイメージ写真で、美しいボランティアですよという画像がちりばめられています。
 しかし、一億円近い寄付金がある、あるいはボランティア時間が延べ5000時間であるなどとあるように、あらゆるボランティアを数字で説明しているわりには、援助の説明が抽象的でした。野の花会の理念めいた文章が一つありましたが、美化された言葉を並べただけで、責任者のような個人名は、ついにどこにも記されていませんでした。さらに、その文章の中にはこういう一節があります。
『厳しい社会の荒波に揉まれ、風雪の日々の歩みのなか多くの方々の温かいご支援を頂き……』
 彼らからすれば、自分たちが迫害を受け、と言いたいのだと思います。
 訪問で寄付を募るというのは、その場限りのものです。訪問販売と異なり、領収書など切りませんから、後で返してもらおうという交渉が成立しません(その後、領収書を渡すケースもあるようですが、沖縄で訪問しておいても、東京の地名の領収書になっているそうで、実際上返還交渉すると支払った以上に損をすることになるでしょう)。その場の感情で寄付させればしめたものです。しかも、福祉やボランティアという美名を用いることで、それに対して寄付の心を閉ざすことが、こちら側の良心の呵責を呼ぶ仕組みになっています。つまり、断ると、まるで障害者に冷たくしているかのような気持ちにさせます。わずかでも払っておけば、その点で心にひっかかりをもたなくて済みます。さらに、原価の安いタオルを千円単位の値段を付けて買わせるのですから、任意の額というわけにはゆきません。この額は、クーリングオフに適用されない範囲の金額に設定されています。適用外でありつつ、なんとか手元から出すことに抵抗の少ない、ぎりぎりの高額を指定している点など、実に意図的で、策略的だと理解できます。
 実に悪辣な手口です。人の良心や弱みにつけこむ、卑劣な方法です。具合の悪いことに、これを悪いことだと考えてやっている手下はいません。文鮮明のもとに金を集めることが世界の救いだと真剣に信じていますから、自分は善いことをやっているという意識しかありません。また、そう意識しなければ自分の精神を安定させることができません。やっている本人もまた被害者であり、そしてまた同時に加害者となってゆくのです。  アルバイトもいるそうです。何か福祉関係でお金を集めて、自分の懐も太るということで、言われるままにやっているバイトさんたちもまた、加害者となりますが、こんなことは、勧誘電話をかけるアルバイトをやっても良心が痛まない人々ばかりの世の中では、ごく普通の営みに違いありません。
 こんな仕組みは、賢明な人々はもう分かってしまっています。人々がこんな馬鹿なことには騙されるようなことは、もう今ではないだろう――そんな気がしていました。
 正直、「まだやっているのか」という印象でした。  が、被害はどんどん広がっています。毎日毎日、こんな小さなサイトにも、野の花会が来たという報告が届いてきます。毎日、どれだけのお金が、組織に流れ込んでいるのでしょう。


 かつては、四つ葉のクローバーをキーホルダーに加工したものを売っていました。そのころ京都で下宿していましたので、何度も出会いました。最初は怪しいとは思いながらも本当かなという気もしていましたが、すぐに、それは統一協会であることを知りまして、二度目からは自信を持って断るようになりました。近くの京大会館で統一協会の講演会が開かれる前には、夜中に、隣のビルから窓を超えて私の部屋を訪ねてきた統一協会員がいたりもしました。聖書を開いて論じたのですが、結局彼らは聖書を超えた『原理講論』を信奉してそれを第一としますから、話が噛み合うことはありませんでした。
 1990年以降だったでしょうか、イニシエーションのつもりなのでしょう、これを飲んでください、と言って、教会で行われる聖餐式めいた形で、正体不明の液体を飲ませる儀式が街の各地で行われることがありました。実際私も、公園でその誘いを受けたことがあります。そのときは、家庭を愛で満たすにはどうすればいいか、というふうな話から入ってきたように覚えます。たぶん、文鮮明に直接間接に関係する液体を飲ませることによって、正式に統一協会に引き入れることなくとも、統一協会員になったという勘定をする必要があって焦っていたのでしょう。ちょうど、合同結婚式が盛んで、人数を集めることに躍起になっていたような観がありましたから。何万人を会員にするなどと言って予言してしまったものだから、そうでもしないと立場がなかったのでしょう。統一協会の内部の人間に対して。
 少し以前には、マスコミが興味を持ってあの合同結婚式と、霊感商法問題を取り上げていましたから、まだ警戒されていたように思います。このごろの大学生あたりは、どうなのでしょう。統一協会の恐ろしさが知らされていないゆえに、それとは気づかない被害にも遭っているのではないかと危惧しています。やはり、知らないというのは恐ろしいことです。知ってさえいればそんな手にはのらないものを、知らないばかりに今日もまた、どれだけの人がひっかかって、とんでもないところに資金を提供する羽目になっているか、考えると悲しくなってきます。
 いかにも美しい言葉で、家庭の平和を守るとか、青少年に正しい性教育をするとか言って、統一協会は大きな組織をすぐに作ります。そこではもちろん、統一協会の「と」の字も出しませんから、もしかすると、あなたが賛同して入会した、道徳的に正しそうな組織や会が、実は統一協会に属している、という場合があるかもしれません。教祖が韓国人ゆえ、日本人は韓国人にすべてを貢ぐべしと考えており、日本人からどんな手段によっても金を巻き上げて韓国人の教祖に捧げることは善だとしています。もちろん一部有力政治家たちと通じていますから、政治的に問題となることがありません。
 インターネット上でも、こうしたからくりはいろいろな角度から明らかにされています。ですから、上に記したことは、私の独断や想像ではなくて、私の実際の体験のほかは、多方面からの報告を元にまとめている、とお考えください。そして、このほかにも

「○○の会」とは実は統一協会のことです

というような情報を、ご存知願えたらと思います。


【Link】

弁護士紀藤正樹さん
全国統一協会被害者家族の会
カルト被害を考える会
新興宗教を考察するページ
統一協会関連企業リスト
野の花会と統一協会(ブログ)
「青春を返せ」訴訟について
yeppun_iの日常的スクラップ:統一協会(ブログ)
野の花会のトークマニュアル
野の花会(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)
統一教会チラシ
統一協会研究
SHINZEN(しんぜん会)=統一教会(ブログ)
統一教会・関連団体(統一教会ナビ!)


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