本

『子どもたちは象をどう量ったのか?』

ホンとの本

『子どもたちは象をどう量ったのか?』
西田知己
柏書房
\1575
2008.2

 最近は、タイトルがやたら長かったり、疑問文だったり、とにかく人の目を惹こうとするタイトル付けが目立つ。それほどに、売れなければ、という思いがのせられているのもよく分かる。そのために、どこからそうなのかが分からないような、サブタイトルや冠のような言葉が付随していることも多い。はたして、書名で検索するときに、最初の文字は何だろう、と思うこともある。昔のカード式の図書館検索だと、不可能に近い。
 さて、この本のサブタイトルは「寺子屋の楽しい勉強法」とある。こちらのほうが、よほど内容が一目で分かる。だが、このタイトルでは、売れないのだろう。
 内容のよい本は、私が触れる限り、無料で精一杯宣伝してさしあげるのに……私では無力なのだろう。
 この本は、文句なしに、内容のよい本である。
 私も大いに教えられた。
 塾で算数を教える立場である以上、算数については、いくらかの雑多な知識を持ち合わせている。この本でも、算数の章で紹介してある、吉田光由の『塵劫記』は、原本を読んだことはないものの、おおよその内容は聞き知っており、とくにその、大数と小数の桁の名前などは、子どもたちの目の前で唱えて見せると、子どもたちも覚えようとムキになるので、利用させてもらっている。しかし、最初は万の十倍を億としていたことすら知らなかった。鶴亀算が最初はウサギとキジであったことも、寡聞にして知らなかった。過不足算は昔は盗人算として掲げられていたのも驚きであった。のべの問題も馬乗りの問題となっていたのが、面白い。今なら電車だからだ。股覗きで木の高さを測るというのも、なるほどと思った。わり算九九の八算さえ、私は知らなかったのだから、殆ど算数教師としては、モグリである。
 いや、知らないことが多いからこそ、学ぶことが楽しい、とも言える。
 算数ばかりではない。読み書き算盤とあるように、国語も重要だが、こちらは文字の習得も大変だが、物語を使って教えることで、そこに修身を含め、社会科や理科の知識も盛られていたことは、想像がつく。また、それは生活の知恵として、理解されて考えられていたことも紹介されている。この本は、一応、社会科や理科も章として立てて内容的に紹介しているのである。
 もう、ひとつひとつ挙げていくことしかないようなくらい、楽しい本である。紹介しきれない。どうぞ、この本を手にとってお読み戴きたい。いわゆる学校の先生も、官僚組織の事務の一員と成り下がらないで、こうした本から、教育とは何かを学び、子どもたちと私たちの時代に必要なものは何か、考えようとしてみるといい。いや、そんなことを申し上げるのは、釈迦に説法なのでしょう……。




Takapan
ホンとの本にもどります たかぱんワイドのトップページにもどります






 
inserted by FC2 system