本

『噂の拡がり方』

ホンとの本

『噂の拡がり方』
林幸雄
化学同人
\1470
2007.7

 ネットワーク理論である。インターネット時代に情報がどう広まってゆくのか、という辺りを中心として、その根拠やそもそもの噂の伝播能力を解明しようとする。
 キーワードは「小さな世界」である。何人かの知人を介せば、世界の中の誰と誰ともつながるネットワークが存在する、という興味深い仮説とその実証の話から始まり、本当かな、と読者は思いつつも、さもありなんと気がつき始める。そうなると、この本はなかなか楽しい謎解きのようになってゆく。
 デマや都市伝説の実例と、その原因の追究など、ついつい引き込まれてしまうものも用いて、私たちの等身大の情報世界に考えが及んでいく。
 時折、専門的なネットワーク理論が展開されるので、難しく感じるところがあるが、読者はおそらく軽く流しても、言わんとするところは伝わるのではないかと思う。
 なにぶん、まだ分野としては新しい。これから研究が始まろうとしているところである。つねに、新しい技術はそのように始まっていた。これからどうなるか分からないけれど、まずは利用してみよう、と。その後で危険性が指摘されることで、制限が施されるという繰り返しであったが、そのためにはどうしても犠牲者が伴うのであった。
 また、このネットワークから外れる人の存在については、もちろん理論として言及されることはないのかもしれないが、もしも、このネットワークに存在しない人は世界に存在していない、とでも言うことができるような世界になってゆくとしたら、それは怖いような気がする。




Takapan
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