本

『探偵ハンドブック』

ホンとの本

『探偵ハンドブック』
大徳直美
PHP研究所
\997
2008.7

 タイトルに先立って「使える! 役立つ!」とある。これが嘘ではないな、というのが率直な感想である。
 全国で最大規模だといわれる探偵社を経営する、有名な女性の著である。かなり手の内を明かすように見えるところがあって、いいのだろうか、と心配してしまうが、そもそもブログなどでも情報を開示しており、親しみをもってもらう意味でも成功しているといえる。まだ40歳前でもあり、くだけたところとビジネスはきっちり行うという点とをバランスよくもっているように感じた。
 さて、この新書、なかなか楽しく読ませてくれる。実際に探偵がどのような仕方で調査するのか、などといったことは一切触れず、依頼者の立場でどういう困難があり、どういう点に注意しておけば調査が成功するのか、そんな観点があるのと同時に、そもそもトラブルに見舞われないために、自分で自分を守るのはたとえばどういうことであるのか、それも教えてくれる。これがなかなかやはりプロの目だと言えるのである。
 引っ越したときに、新しい鍵に付け替えるのがよい、という。ふむ。私も合鍵をこしらえて使っていたが、その合鍵を返却するようなことはしなかったことがある。つまり、悪意をもてば、次の住人のところに侵入できたかもしれないということだ。これはいけない。自分で処分したのだが、そもそも「合鍵はつくるな」という規定であったとしたら、それを返すこともできないわけで、いろいろな面に不備があるのも確かである。
 暗い道を歩くとき、エレベータに乗るとき、生活の中の小さなシーンにも、なるほど、と思わせるアドバイスがある。マンションに帰宅してすぐに明かりをつければ、どの部屋に住んでいるのか、知らせるようなものである、というのも、たしかにそうだ。
 浮気を知ったときにも、このように対処しておけば、解決が図りやすい、という点も告げられる。たしかに、読めばその通りである。しかも、そこに法的な面のアドバイスが加わるから、事務的にもどこが重要であるのか、分かりやすくていい。
 その他、盗撮を防ぐためにちょっと気をつけたいこと、盗聴器がどういうところに仕掛けられやすいのか、企業犯罪でもたとえばこういうことに注意すべきだ、など、ためになること請け合いである。
 尾行されていると思ったら、ひたすら右に曲がって元の道に戻るようにせよ、というのは笑った。振り返って睨んだら、普通の人は驚くが、尾行している者は目をそらすなど、ふむふむと思った。
 探偵社として繁栄しているのも、分かるような気がする。




Takapan
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