『マンガ歎異抄入門』
ひろさちや監修・小川集画・白取春彦作
サンマーク出版
\1010
1991.3
マンガの本である。最後に、歎異抄全文と意訳が掲載されているほかは、言ってみれば普通のマンガである。
ストーリーは一本。その中で、和尚が歎異抄を人々に伝えていく。いわゆる前科者としての主人公が、世の中での挫折の中で、和尚から歎異抄に書かれていることの深い意味を教えられていく。
これが、よく分かるのである。
抽象的な議論ではなく、人生で出会うような困難の横で歎異抄が用いられるとき、なるほどそういう意味なのか、と受け止めやすい。
ストーリーはお読み戴いてのお楽しみにしておこう。
キリスト者がこうしたものをお勧めするというのは、不思議な感じもするが、ここにある他力についての語りが、どうしてどうして、キリスト教会で教えられる内容と、よく重なってくるのである。
元々、聖書と、浄土真宗の考え方は似ている、などと言われることがある。親鸞の思想は、とくにプロテスタントの考え方につながる構造をしている、と言うのである。
自分が何者かになるのでもないし、自分が何者かとして感じ、評するのでもない。そうした実相が、このマンガのストーリーに、よく表されているのである。
聖書を知ろうとする動きもある。クリスチャンも、こうした日本で長い間地位を保つ宗教については、知ろう、とする気持ちを持った方がよいような気がしてきた。
歎異抄くらい、読んでおきたいものである。