本

『それでも「好きなものだけ」食べさせますか?』

ホンとの本

『それでも「好きなものだけ」食べさせますか?』
NHK「好きなものだけ食べたい」取材班
NHK出版
\1680
2007.1

 本を開くとはじめに、カラー写真の頁がある。衝撃的である。小学生たちのとった食事の写真であるが、絶句してしまいそうなものが多々ある。しかもそれは、例外的だとは言えないのだという。
 後に記されているが、日常の食卓を調査のために写真に撮ったものであり、またこの本は「NHKスペシャル」という番組として放送されたものであるが、その番組を見て、多くの人がショックを受けたと報告されている。なぜ日常の「普通」の食事が、ショックなのか。ここに、この問題を解く謎がありそうな気がするが、どうだろう。
 多彩な執筆者が、様々な角度から、食生活を見直して、丁寧な調査の結果をまとめてくれている。
 朝食に、どうしてタンパク質が必要なのか。もちろん、炭水化物もそうだが、それはどうしてなのか。なぜ朝食は抜いてはならないのか。これを、データと共に、メカニズムも図解して、簡潔に説明してある本は、実はさほど多くはない。
 昼食ならば、抜くのもありだという。日本人が昼食をとりはじめた歴史は、意外にも浅い。ところが給食も含めて、近年日本人の昼食が、夕食のように豪勢になっているという。だとしたら、夕食の分は摂りすぎということになる。これが、肥満へとつながる。一日の栄養欠損を補う目的の夕食は、ふんだんな量と栄養とを備えたものであるべきなのだが、これを昼食が同じことをやってしまっている問題があるという。
 肥満の子が多い一方、やせ体型の子どもが、それ以上に増加しているという事実と、その背景が語られる。また、食育について実験し、あるいは成功している実例がレポートされる。
 執筆者が多数であるため、本としてのまとまりは幾分損なわれているが、それぞれの項目に、驚くべき点を見ることができる。
 営利が目の前に掲げられている民放は、視聴者の気に入るようなものが放送されなければならない宿命をもつ。その場合、健康情報を届けるにしても、利権や視聴率問題が殆ど最優先されていることになる。「あるある大事典」はその象徴例とされる。他の番組も然りである。健康情報を売り物にしていたコーナーを、とたんに大幅にトーンダウンさせて方針転換をはかった、お昼の人気番組は、同じ轍を踏んではならないとの危機感からであろう。
 しかし、その宿命のないNHKは、真実を探ろうとする気構えをもつ。少なくとも民放よりは高いレベルで維持できる。そのNHKならば、本書の内容も、調査的には十分信用してよいものと思われる。
 というのも、取材姿勢に共鳴できたからである。それは、この食生活の問題を、誰が悪いのかという犯人探しのためにするのではなくて、自分たちも同じように食生活が乱れていることを十分自覚した上で、説教臭くないように配慮し、同じ生活者として自分たち自身の自画像を描くつもりで制作していこうという結論を、最後まで議論した上で出して、取り組んだという説明であった。
 これは、何事も、心がけなければならない姿勢であると思うが、どうだろうか。




Takapan
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