本

『聖書の底力』

ホンとの本

『聖書の底力』
竹井祐吉
文芸社セレクション
\700+
2014.2.

 地味な本である。ただの文庫であるし、近年文庫も高くはなったが、価格も今では並の部類である。タイトルも、センセーショナルなものを感じさせない。サブタイトルは「世紀を貫く真理のことば」ときている。これまた地味である。帯にはこのように記されている。「優しくいざない聖書の世界」、そして「旧約・新約聖書の舞台と時代への広い知識と深い理解に基づきキリスト教を身近に読み解く」と書かれている。帯の裏には「聖書は神が送ってくれた手紙」とあり、「その底力がこの世全体を支える支点として聖句を通して示される。聖書を読むことの中に、自分が新しく見出され、新しく生かされる」とつながっている。実に地味だ。
 だが、私は言う。この本は実に偉大だ、と。
 まず、世界のベストセラーとしての聖書が、たとえ売れているにしても、果たして読まれているのだろうか、と著者は問う。聖書を、神の声として受け止めていこうと読者を誘い、本書は始まる。長く文書伝道誌に寄稿していたものを集めたというが、私の印象では決して古びてはいない。また、実際新しい話題を含めた文書もある。しかし、新旧の問題ではない。ひとつの聖句や聖書の部分を、ひとつ平均5ページという中で解釈し、語っている。簡潔でありながら、的を射た、的確なメッセージとなっている。そればかりか、私の無知もあるにしても、実に新鮮な視点がそこにあるのだ。どこを読んでいても、思わずハッとさせられる経験をするのである。もちろん、それぞれの語る者に、それぞれ神から与えられた使命があり、それを語るとき、他人には新鮮に聞こえてしかるべきなのだが、この本の場合、それが格段に多く伝わってくる。私の心にびんびん響いてくる。こんな本は、経験上、そう出合うものではない。
 タイトルの「底力」というのは、深い意味がこめられている。詳しくは本書から聞いて戴きたいが、イエス自ら一番の底にまで降りてきてくださったということに関している。
 ここに、50のメッセージが記されている。私も多くを語るべきではない。これは内容の濃いデボーションとなる。新たな地平が開かれていく経験を読者はするだろう。少なくとも私はそうだった。また読みたい。デボーションとして繰り返し触れたい。それだけの価値はある。どこへでも持ち歩ける。これは決して、聖書を知らない人のための聖書入門というばかりではない。聖書に長年触れ合っている信徒こそ、隅々まで驚きの出合いに満ちている、そうした宝物だ。
 せめてもっとよい宣伝をして、多く注目されてほしいと願っている。私はこの場で、その小さなことができるだろうか。




Takapan
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