本

『スノーフレーク』

ホンとの本

『スノーフレーク』
ケネス・リブレクト
パトリシア・ラスムッセン写真
でがわあずさ 広田敦郎訳
山と渓谷社
\2730
2006.11

 サブタイトルに「雪結晶のふしぎを探る」とある。
 雪というと、中谷宇吉郎博士の名著が思い起こされる。世界に衝撃を与えた研究であったと記憶する。その研究のことも、この本にはもちろん踏まえてある。
 それにしても、時代が進み、写真撮影の技術の発展に、うっとりするほどである。まるでファンタジー絵本のように、この本を開けば、美しい空想の世界に飛び立っていけそうな気がする。それほどに、結晶の美しい写真がふんだんに紹介されている。もう、文章を読まなくても、その写真を見ていくだけでも、この本を買う価値があろうというものだ。
 雪の結晶についての、あらゆる美学がここに語られている。そこには、難解な理論を駆使する姿勢は見られない。もしかすると、それはあるかもしれないのだが、専らこの結晶の魅力に読者を酔わせるかのごとく、科学的な言葉でありつつも、どこか文学的に、私たちの情緒をしつこく刺激し続けるのである。
 世界に二つとして同じ結晶はない。そのように、最後に言い切っている。古来の哲学の言及をみるようでもあるが、私たち一人一人に個性が与えられていることへの、頼もしいエールであるようにも受け取れる。まだまだ何の理解もなされていないに等しいという、この雪片への誘いに、私たちはむしろ生命の尊厳や驚異を、覚えるような気がするのだが、どうだろうか。




Takapan
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