本

『カタツムリの謎』

ホンとの本

『カタツムリの謎』
野島智司
誠文堂新光社
\1500+
2015.6.

 カタツムリといえばアジサイ。そして六月。
 その程度のイメージしかもてなかったとしても、大丈夫。この本は、温かく迎えてくれる。そして、目から鱗が落ちまくる。
 実は、私はこの本でそういう体験はもたなかった。私は、しばらくカタツムリを飼ったことがあるからだ。そのときには、さすがにいろいろ驚いた。カタツムリってこうだったんだ、こんな反応をするんだ、こんなことがあるんだ、と毎日が発見だった。
 それを、環境について研究する若い研究者が、著してくれた。カタツムリを愛してやまないことが、本のあらゆる箇所から伝わってくる。それは、可愛い可愛い、というものではない。そこは理科系科学者の本性でもある。カタツムリについて、正確に的確に綴る。まさに、これは「説明文」である。そう、だから私はきっとこの本の中から、将来学校の教科書に掲載される文章が出てくると思う。それほどに、適切で分かりやすく、また興味を惹くような書き方を自然と見せてくれる文章であったのだ。振り仮名もついて、小学校高学年ならば全く問題なく読むことができる。全編がカラーで、美しい写真やイラストがふんだんにあって、視覚的に理解することもできる。あらゆる面から、デザインとしても実に優れた本となっており、子ども向けの科学の本としても秀逸である。
 そういうわけで、私が個人的にカタツムリについていくらかのことを知っている上での感想だが、実に楽しい。もちろん、私は特定のカタツムリを飼ったに過ぎず、きわめて経験的な領域でしか知らなかったわけだから、カタツムリ全体から見てどういう意味があるとか種族的にどうだとかいうことは、この本で大いに学んだ。とくに、蛇と左巻きのカタツムリとの関係など、もう面白くてたまらない話題である。
 著者のカタツムリ愛は十分伝わるが、冷徹にカタツムリを素材として科学の真理のために実験をするようなこともさらりと書いてあって、ただの愛好家でないことも伝わってくる。著者は、環境が専門なのだ。そこで、説明の中で、環境におけるカタツムリの位置や、カタツムリに限らず、生態系というのはどういうことであるのかなど、中学の理科以上に深い考察がぽんぽんと飛んでくる。たとえば、食物連鎖というのは、食べると食べられるの関係で説明されるが、自然の連鎖はそれだけの関係ではない。マイマイツツハナバチは、カタツムリの殻を卵の部屋として利用する。カタツムリがいなくなると、このハチは困るのである。
 実際にカタツムリを観察するための手がかりや方法、そして手を洗うのは何故かなどについても、実に分かりやすい説明が、丁寧に施されている。大人が読んでもわくわくするほどよく分かるのだから、子どもならなおさら楽しい内容に見えることだろう。これをきっかけに、実際にカタツムリを探して飼育するようなことをする子が現れてほしいと思う。私の場合には、卵はついに孵らなかったが、交尾もしたし、卵も産んだ。飼うことは、ひどく難しいものではない。ただ、土を使わないほうが清潔だろうという人の提案が本に紹介されており、それを知っておれば、もっと卵が孵るところまで観察できたのだろうか、と悔やまれる。土は、古いフライパンで煎って使ったのだが、それでもやがて土からカタツムリにとり悪い菌が露われたようで、長生きしなかったものが多かったからだ。
 カタツムリをいくらか知っている者として、お勧めする。これはいい本だ。ほんとうに、良い本だ。




Takapan
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