本

『生活家電入門』

ホンとの本

『生活家電入門』
大西正幸
技報堂出版
\2310
2010.5.

 副題に「発展の歴史としくみ」とある。これで必要十分な、内容紹介となっている。
 特にカラーの頁もなく、地味である。イラストは多い。著者自身も、必要に応じてイラストを提供している。現物の写真がうまい具合に入手できない資料もあっただろうから、イラストはそれだけで良い情報を提供してくれる。団扇を四つ回るようにあつらえた、納涼団扇車など、イラストによらないとなかなか紹介できないことだろう。また、「しくみ」とあるくらいだから、その構造や原理などの説明のためにも、イラストは活躍する。
 著者は、電機メーカーで働いていた人で、これら家電開発に関わっている。いわば内部資料でもある。単に宣伝めいた機能のセールス的解説ではなく、そもそも何故冷蔵庫は冷やすことができるのかといった原理から正確に伝えてくれる。その原理そのものの説明が目的ではないから、子どもでも分かるように語られているわけではないが、一般的な大人に対しては十分であろうと思われる。
 西暦何年に何が登場して、そのころ云々という描き方が多い。家電製品のその時代のスペックも実に正確に綴り続けてくれている。これだけで、家電の歴史百科のようでもある。「火熨斗」などという言葉を聞くと、昔耳にしただけでずいぶん忘れられていたものに出会ったような気がして、ぞくぞくしてしまった。十五ほどの製品を章立てにより、その機能構造と歴史について語るということになるのだが、今なお使われている電化製品がそのメインストリートを走っている。そこでコラムというところに、短く触れられている製品たちがあるのだが、これも見て、昔あったとか、今もあるのだろうかとか、そんな懐かしい思いに満たされるのであろった。ハンディファンは今も百均にあるぞとか、毛玉とり器ってあったよなとか、かつお節けずりなんて今は売れるはずがないとか思えたり、ふとん乾燥機は今使われているのか、酒かん器も売ってなどいないぞ、ホームベーカリーもあるなか、なんだかうれしくなるようなことが続々のコラムなのであった。
 個人的には、先日壊れたので洗濯機を買い換えたのだが、その構造や機能は、こういうことだったのか、と目を円くするばかりであった。資料的価値が高い本である。こうした本は、調べるためにも重宝する。図書館には、こういう資料性豊かな本がふんだんにあるといいな、とも思った。




Takapan
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