本

『少年ジャンプ勝利学』

ホンとの本

『少年ジャンプ勝利学』
門脇正法
集英社
\1365
2012.6.

 友情・努力・勝利。
 週刊少年ジャンプの合い言葉である。あまりにも有名になったが、少年の好きなこの三つのテーマのどれか、できれば全部を含むような作品を掲載し続けてきた。
 漫画週刊誌としては、少年マガジンと少年サンデーというライバル誌の出現から、約10年後れている。が、売上げの点では他を寄せ付けない成果を見せ、少年マンガの世界に君臨し続けている。
 その理由の一つとされるのが、この三つの合い言葉である。マンガにはいろいろな要素があるだろうが、この路線を決して外すことはない。そして、読者の支持をどれほど受けているか、読者アンケートをとり、成績の振るわない作品は打ち切りの運命に陥ることをルールとしている点で、作家のほうにも明らかな目的をもってもらうように、競争の原理を導入している。こうして、より向上していこうという思いで作品が創られていく。
 うまいやり方だ。それが依然として効力がある、というのも凄い。
 この本は、そのジャンプに掲載されるコラム「ジャンスタ」の担当者であるスポーツライターの取材を、一定の観点からまとめたものである。それは、スポーツ選手に、友情・努力・勝利それぞれの点で特に、少年ジャンプとの関わりを話してもらったことである。
 出版が、ロンドンオリンピック直前の初夏。それで、オリンピック選手の取材が多い。まさにタイムリーである。その何人もが、週刊少年ジャンプの熱烈なファンであるのだという。あるいは、その中の特定のマンガに思い入れが強いのだというのだ。まさにその競技であるということもあるが、異種競技であっても、同じスポーツである、感じるところはある。いや、ワンピースやナルト(カタカナで表記することをお許し戴きたい)など、スポーツとは関係なしにでも、心躍らせモチベーションを挙げるのにどんなに役立っているか、というような話も多い。
 マンガ好きな人にも、スポーツ好きな人にも、魅力ある企画である。
 私のように、もうジャンプのような漫画雑誌を読むことすら面倒だと思うようになってしまった者でさえ、テレビアニメがあっていることを知っているから、ずいぶんとなじみがあるような錯覚を感じるマンガがここには多い。というより、たいてい知っている。ただ、ストーリーとしてその世界に入っていないので、この本で、そもそもそのマンガはどういうストーリーなのかということを、数行で伝えてくれるのは実に分かりやすくて助かった。なるほど、そんな話なのか、と分かった気になってしまえるからである。
 もちろん、感動している少年たちは、その世界の中にいる。それはそれでいい。私もまだ生まれたてに近いような時代にジャンプを時折買っていたことがある。その頃から両津勘吉が今なお頑張っていることなど、信じられないほどである。ワイルド7が十年続いて驚異的だったような時代を遙かに凌駕している。しかも、この本で知ったのだが、このこち亀は、一度も休載したことがないのだそうである。これまたありえないようなことだと驚いた。
 若い選手へのインタビューなだけに、さすがに紹介されるマンガは新しい。もう松坂大輔のドラゴンボールや、サッカー選手のキャプテン翼が最も古いだろうか。こち亀を除いては。しかし、今まさにアニメ放映中というものも却って親しみやすいような気もするし、こうして並べると、まさに少年ジャンプの知名度や活躍度というものがありありと伝わってくる。
 そしてそれは、既成概念の「少年」などではなしに、世の中の男一般の――もちろんこの本にも女性アスリートは幾人も登場しているが――備えるべき当然のモットーであるはずのものなのかもしれない。




Takapan
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