本

『新版 小学生の叱り方』

ホンとの本

『新版 小学生の叱り方』
樫村悌
学陽書房
\1785
2006.10

 ともすれば、抽象的な理論をふりかざすか、自分の狭い体験や理想を一人で盛り上がって熱く語るかに終わりがちなテーマである。狭い了見を万人に押しつけられても困るのだが、笑うべくは、えらく自己満足して、自分がうまくいったひとつの例に終始するケースである。
 さて、この本は、驚きであった。
 現役の小学校教諭である。実践と実例が豊富であるのは当然かもしれないが、徹底した自己分析により、自分を知ることの意味を丁寧に教えてくれるのである。
 はっきり言って、これはもうノウハウ本ではない。自分探しについて探求した本を最近読んだが、それとは比較にならないくらい、明晰な自分探しの本となっている、とも言えるのである。
 それは一言では尽くせない。実に分かりやすい実例の紹介、その場の雰囲気を生き生きと伝える叙述、どれも魅力がある。
 さらに、そこに関わる教師の心理をたどることを怠らず、教師がどのように叱っているのかという分析を施している。子どもが悪いとか、教師が悪いとか、そんないかにも建前的なことを言おうとしているのではなくて、互いが人格を認め合い、自分を認識し、自己を成長させるのに相応しい場面を生きていくためにはどうすればよいか、という知恵がふんだんに紹介されている。
 結論的な部分をここで語ってしまうのは気が引けるが、「自己評価不安からの解放」というのが、この本のたどり着いた場所である。それは、本来の自分を探すことそのものの目的でもあったのだろうし、鬱的な心が癒されるための大切な道でもあるのではないか、と思う。
 自分の失敗を、これでもかと言わんばかりに晒していくなど、誠実な方である。こうした方であるからこそ、子どもたちをたくさん世に送り出すことに貢献してこられたのだろうと思う。
 読めば、誰もが人生を変えていく――それくらい大袈裟に言ってもよいかというほどの本である。




Takapan
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