『死海文書入門』
ジャン=バティスト・アンベール&エステル・ヴィルヌーヴ
秦剛平監修
遠藤ゆかり訳
創元社
\1575
2007.9
知の再発見双書134である。カラーの写真や図版が豊富で、小さな百科事典に匹敵する。
死海文書は、第二次大戦後世界を驚かせた、世紀の発見であった。それは、聖書の歴史を変えるほどの衝撃であった。
死海文書以後、聖書やユダヤの研究は、それまでと全く違ったものとなった。画期的な発見となった。
詳しくは本書を読んで戴きたい。それなりのことをご存じの方も多いと思う。
死海文書のことを書いた別の本も見たことがあるが、なじみにくかった。それに比べると、この本は写真が多く、見て分かったような気にもなってくる。読み進みやすいので、理解しやすい。
巻末に、カラーではなくなった頁にではあるが、さまざまな文献の中にある、死海文書についての記述がダイジェストで集められている。これがなかなか味わい深い。多くの文献にわざわざ目を通さなくても、おいしいところが得られる。
もとより、死海文書は、まだほんの少しのことしか解明されていない。考古学的には何も分かっていないに等しい。よくぞ二千年もこうしたものが保存され、見つかった者だと、改めて驚く次第である。
死海文書のことがまた新たに分かってくる時代が、くるだろうか。それとも、やはりとことん信仰の世界に沈んだ器のように、拾い上げることができないものなのだろうか。