本

『シブすぎ技術に男泣き!』

ホンとの本

『シブすぎ技術に男泣き!』
見ル野栄司
中経出版
\999
2010.1

 面白すぎる。
 これはマンガである。Tech総研のサイトに連載されている漫画が、単行本になった。リクルート関係のサイトであるが、著者は元エンジニア。現場での経験と知識とを、九年間の勤務の後に、マンガという畑で開花させた。知る人に強い支持を受けている。
 派手なアクションはギャグマンガの王道だが、ここには一つの筋が通っている。それは、中小企業で黙々と働く工学系の「男たち」の、仕事にかける魂である。金が問題ではない。「職人」と呼ぶに相応しいその姿勢に、浪花節調のシブさを感じ、表に出そうとしている。
 工学系の学生が、金融工学など経済の分野に流れ出している現状を描いた新書を、私は先に書評で暑かったが、そこに書かれていた内容がこのマンガで証明されているように思えた。
 工学分野における男たちのドラマが、ここにある。
 意識的にそれは「男」と扱われている。もちろん女性がいてもいい。男しかだめなのか、と差別扱いをしている非難を受けるかもしれない。だが、そういう範疇のことではない。ひたすら技術にこだわりそれを成し遂げようとする、どこか単純で一途な人物は、性別という問題を超えて、「男」と呼んでみたいのだ。子どもが何かに熱中するようなその眼差しは、やはり「男」だと言っても差し支えないと思うのである。
 そして、彼らが日本の経済成長を支えてきたのは事実である。NHKでひところ強い支持を受けた番組、プロジェクトXを笑いの中で描いたのがこの本だと言ってもいいだろう。
 ネットのページにまとめられた、数頁で一話となるものを集めたもので、時に連続してひとつながりのエピソードとなることもある。読みやすいのも確かである。
 マンガとしても描き方がうまく、さらにこの一途な男たちのキャラが分かりやすく、構成も見事である。厭きない。こうして、工学の良さにどこか惹かれている若者が現れないかと願うばかりである。ところが今の子どもは、プラモデルというものを作らない。私は個人的に、あのプラモデルに対する熱意が、工学の基本にあるような気がしてならない。もちろん、現代だとそれがロボットというものにもなるかもしれない。それでもいい。どういう仕組みで動くのだろう、どうすれば動きが改善されていくだろう、そんな「仕組み」への関心が、ある事柄を実現するために役立っている。ICチップの中の見えない仕組みに基づいて、ケータイや電子ゲームを楽しむだけの子どもばかりとなっては、やはりこの工学に対する関心が薄れていってしまう。
 経済的にも、こうした人々が優遇されない現状が、なんだか切ないが、そこがまた「男泣き」の所以であるのかもしれない。そして、金じゃないんだ、という彼らの職人気質が、ここに描かれているところにこそ、価値があるのかもしれない。
 どうぞ、笑ってやって戴きたい。そして、ほんの少しでもいい、エンジニアたちに敬意を払ってもらいたい。生活の中で何の感謝もなく使っている便利な道具について、それを血の滲む思いで開発した「男」たちがいることを、覚えていたいと願うのだ。




Takapan
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