本

『幸せはあなたの心が決める』

ホンとの本

『幸せはあなたの心が決める』
渡辺和子
PHP研究所
\1000+
2015.9.

 もはや売れっ子作家のように扱われている渡辺和子氏である。ベストセラー書『置かれた場所で咲きなさい』(2012)は、2016年現在でも、まだ売れているリストに入り続けている。
 今回、自分の心のもちよう、というと身も蓋もないが、自分の側の意識の違いによりものの見え方、そしてこれからの自分の歩みの方向が違ってくるのだ、という主旨に合う短いエッセイが、おちこちの本から集められて、またひとつの本となった。こうした構成は、商売としても書店はうまいことをするものだと感心するが、たしかに読者の理解にとってはありがたい。読者は、その本一冊で、しばらく同じ空気に浸っていき、読み終わったころには、自分がその色に染まるか、そのような行動に変えられていくかという経験をしやすくなっている。
 小さな本で読みやすく、また丈夫に作られていて、持ち歩くにもいい。このスタイルが受け容れられているのかもしれない。こういう本の場合、「はじめに」が重要である。書店でまず開いて見たところで、ぐっと心を掴んだら、買おう、という気持ちに走っていく。冒頭の、いきなりのエピソードが、確かにその役割を果たしていた。そしてこの本がどういう本であるのかを物語り、全部読みたいという思いに浸らせる。ここでそれを明かすのは拙いと思うので、どうぞ書店でまず「はじめに」から目を通して戴きたい。
 自分のものの見方ひとつで、自分の心向きが変わる。それはあるときには、他人への無関心のように思われる危険性をもつ。本書にもそうだろうかと思わせるような例もある。しかし、これだけ集められ続いて綴られていたら、誤解をする余地はない。確かに、他人を思いやり、愛を尽くしましょうというタイプの提言がまとめられている本とは言えない。むしろ、自己実現あるいは真の自由というものについて考えさせるものが多い。その意味で、ここで与えられる格言あるいは知恵というものは、主語が自分である。私がどうすればよいのか、どう考えればよいのか、そんな方向性をもっている。だからまた、手に取りやすいのではないかとも思われる。ノートルダム清心学園理事長として、学生に向けて語る言葉がこうして揃えられているとも言えることから、若い女性、いや男性に対しても、その関心の第一である自分というものからスタートして見える景色についてアドバイスをしていくのである。
 そこには、キリスト教そのものや聖書のことばというものに頼らない姿勢が窺える。但し、聖書や祈りの中から育まれてきた言葉が向けられているのは間違いない。著者自身、特異な体験をたくさんなさっている。挫折もあるし、病もある。その中で射しこまれてきた光をこうして証しするような面もある。自分を不自由にしているものは何か。束縛しているのは何か。敵がいるかもしれないが、その縄目を解くには、自分がもがく必要はない。自分が他を認識するスタンスを、ほんの少しずらしたり、位置を変えたりすればよいのだ。当たり前すぎる指摘ではあるが、短い一つひとつのエッセイがたいへん読みやすく、読者に好まれる理由もよく分かるように思う。
 教育という世界では、こうした知恵をもたらすことを自らなす必要がある。自身慰められると同時に、こうした気持ちでまた若い世代に接していくことを教えられる。




Takapan
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