本

『「書道」の教科書』

ホンとの本

『「書道」の教科書』
横山豊蘭
実業之日本社
\1575
2008.11

 若い書道家であるが、各方面で活躍しているらしい。そういう各地での活動が、さらにまた、どうすれば書道を伝えることができるのか、を考えさせる契機にもなるということがあるだろう。活躍しているからこそ、いろいろな人と出会い、訊かれることを説明しているうちに、このように説明すればよいのでは、ということを思いつく、あるいは天から与えられる、ということがあるものなのだ。
 ありきたりの書道の説明ではない。専門家になればなるほど、「このくらいのことは一般に知られているに違いない」と思いがちなのであるが、ここは、まず筆の持ち方を、小学生に説明するように、説明する。写真入りである。この写真の多さが、またこの本の魅力である。人間、見なければ分からない部分が多いのである。出来上がった書を見せて、「このように書くのだ」では、分からないはずなのに、これまでの多くの本が、そのようにやっていた。問題は、どうすればそう書けるのか、であって、できあがりを見せることではない。出来上がった料理を見せて、このように作りなさい、では料理は作れない。レシピが必要なのである。この本は、いわば書道のレシピをふんだんに載せているのだと言えるだろう。
 穂先の動きが丁寧に記されている。独自の描き方を紹介し、そのルールで、動かし方を示している。これが分かりやすい。篆書の筆先の動きや書く順序がこんなに詳しく書かれてあると、ちょっと書いてみようか、という気持ちにもなるものである。
 その上で、書の歴史や鑑賞についても、実に多くのことが述べられている。そして著者は、アーティストでもあるというわけで、書のパフォーマンスについても、語られている。このあたり、従来の書家からすれば、逸脱感を覚えることがあるのかもしれないが、読む方は楽しい。
 この一冊で、書道をやろう、という気持ちになる。子どもの頃に習字をしていて、それっきりになっている人は少なくないと思われる。そこへ、この本が現れたときに、また書への興味が沸いたとするならば、この本の役割は非常に大きい。
 価格も手ごろである。これは買って損はない。芸術への見方をも、養わせてくれるのではないだろうか。




Takapan
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