本

『自己カウンセリングのすすめ』

ホンとの本

『自己カウンセリングのすすめ』
児童心理2007年2月号臨時増刊No.855
金子書房
\1020
2007.2

 一種の雑誌なので、このコーナーに載せるべきではないという見解でいたのだが、役立つ面もあるのでどなたかの参考になるかもしれないと思い、掲載することにした。
 サブタイトルは「子どもを育む親・教師へ」とある。そのため、親向け、教師向けといった寄稿も多々あるのだが、執筆者がひじょうに多いのと、たんに教師とか親とかいう限定で述べられているとは限らないのとで、ビジネスマンでも芸術家でも、なんらかの人と関わる方は、垣間見られて損はないかと思う。
 心理学者(大学教授)やカウンセラーは、それぞれの立場や考え方をもっている。この本にも、いろいろな意見があるものだと感じた。また、原稿依頼を受けて云々というあたりから書き始める方も何人かいて、本の編集の様子も窺えるようなところもあった。
 心理学関係は、実にたくさんの流派があるように感じる。人の数だけ心理学者がいるのかもしれない。それだけに、唯一これしかない、みたいな宣伝はするべきではないし、そういうものでは事実ないであろう。かといって、現実に困っていて対処ないし治療をしなければならないとなると、どれかの方法に没入していくしかないであろう。
 この本のテーマは、「自己カウンセリング」。つまり、他人に相談することなしに、自分で自分を治療しよう、という含みが隠れている。完全にそれができなくても、自分のことを少しでも客観的に見つめることができたら、回復のきっかけがつかめる、というのである。
 自分を知るというのは、簡単なことではない。哲学的には、究極のところできないというのが通論である。近代の哲学者は、その自我の認識という点に膨大なエネルギーを費やした。ただ、明治以降の日本の知識人たちは、えてして、この自我の認識についての洞察を、なんらかの形で行ってきていたといえる。一般の人々は知識人ではないにしろ、学生は概ねその後に従った。
 情報過多になった今の時代、もしかすると、あまりにも人々は自我の認識をしようとしていないのかもしれない。あるいはそれは、自己に向き合っていない、という言い方でもよいかと思う。
 自己に向き合う思考ができたとするなら、その後は、専門家の援助を受けるべきボーダーラインがどこにあるか、それが、大きなポイントであるような気がした。それは、やはりカウンセリングそのもののプロの助言が参考になる。
 なるほどと思う寄稿もあれば、どうかなと思う内容もある。だが、自分を見つめるとか、自分探しとか、そういうことに関心のある方は、一読の価値があるかと思う。ただ、くれぐれも、今の自分は本当の自分じゃない、と叫んで、人の制止を振り切って走り出すようなことはしないほうがよいと願う。現実の自分を認めるというのは、簡単ではないかもしれないが、大切なことだとつくづく思う。
 ちなみに、この本の中の原稿には、自己カウンセリングというものを勧めていないものもある。そのあたり、タイトルと違うのでなかなか味わいがある。




Takapan
ホンとの本にもどります たかぱんワイドのトップページにもどります






 
inserted by FC2 system