本

『さかなクンのさかなレシピ』

ホンとの本

『さかなクンのさかなレシピ』
さかなクン
主婦と生活社
\1260
2008.1

 テレビや雑誌でおなじみの人である割には、謎めいた人でもある。
 水産庁水産政策審議会特別委員などと聞くと、いったいどういう人物だと思えるが、まちがいなく、このさかなクンである。
 私はテレビ出演はさほど知らないのだが、その魚に関する知識については、ほんとうに尊敬に値するものだと知っている。魚を愛し、魚に通じているその知識と実践のことは、全く口を差し挟む余地がない。しかも愛するというのは、魚を食べるということにもなっていて、食べ方についても熟知しているというわけで、ますます感心する次第である。
 そこで、この魚料理の本である。
 我が家は、近くに実にうまい魚を売る魚屋があって、週に幾度もそこで魚を買う。細かな注文にも応じてくれるし、骨もその場で抜いてくれる。値段も安いと思う。そこで買うようになって、スーパーの魚屋では魚が買えなくなった。もう、天と地ほどの差がある。秋刀魚もそのまま塩焼きにするくらいしかなかったのだが、店主の薦めで蒲焼きもやってみた。かじきの調理も教わった。こうして、魚には本当にうれしい接し方をさせてもらっている。
 そこへ、このさかなクンのレシピである。図書館で借りてから、その魚屋で買ったのがマダイであったが、さかなクンは、それをマリネにする技を紹介してくれていた。やってみると、これがまた絶品である。
 魚を、そのあたりの家庭よりはかなり頻繁に食卓に上らせる我が家とあっては、このレシピの中にもよくやる調理法もあるにはあるが、思いもよらぬものも多々あった。しかも、缶詰の魚を利用したメニューなど、拍手を送りたいような心地であった。魚は鮮度が問題であるせいか、缶詰への利用が多い。逆に、缶詰を探すと、魚ばかりである。これは弁当のネタにしかできないと思いこんでいたが、とんでもない、ちょっと手を加えることによって、たいへんなディナーにもなりうるのである。さかなクンに、それを教わった。
 本誌のイラストも、著者による。愛情あふれるタッチである。実に魚を愛してやまない人である。いや、皆さんも、素人がさばいたスーパーの魚から離れて、玄人のさばいた魚を買って、味わってください。健康の上でも、魚は見直されている。日本人が、魚へ還らなくて、なんの愛国ぞ、と思うのであるが……。




Takapan
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