本

『こんなにも面白いローマ帝国1500年の歴史』

ホンとの本

『こんなにも面白いローマ帝国1500年の歴史』
歴史の謎を探る会編
河出書房新社
\539
2007.12

 KAWADE夢文庫なる文庫シリーズの一つ。「常識として知っておきたい古代ローマの興亡と英雄たち」とサブタイトルが付されている。
 あまりにも興味本位で裏話ばかりが編集されているようなこともある、この種の本だが、歴史の流れに忠実に綴られている点で、たしかに「面白い」と言える本であったように思う。
 ローマの皇帝という人物に限定し、その人物が何をしたかを紹介しているスタイルであるが、その一貫した姿勢により、たしかに分かりやすいものとなっている。「常識として知っておきたい」という言葉にも恥じない内容となっているのではないだろうか。
 ローマは一日にして成らず、千年を超えて君臨した大帝国は、その領土の広さがすべてではなく、今日の世界を形成するという意味で、多大な影響を与えている。その法制度がほぼ今のまま続いていると言って差し支えないようなところなど、最たるものであろう。建築についても驚異的な整備がなされており、ローマへ通じる道についてもこの本には紹介してある。
 それにしても、ローマ皇帝の系図には、なんと血なまぐさいものが張り付いていることだろう。暗殺に次ぐ暗殺。殺さなければその政治を止めることができない文化であったのだろうか。だからまた、暗殺を恐れて恐怖政治が敷かれていく。巻末には、それが水道の鉛の影響もあるという説があるとほのめかされている。
 ともすれば、ローマ帝国の解説など、ネロかせいぜい五賢帝あたりで終わりかねないものなのだが、西ローマ帝国の滅亡が丁寧に語られ、その後の東ローマ帝国については記述は端折るものの、その立場や状況はそれなりに伝えられているのは、評価したい。キリスト教公認のあたりからページ数の制約がくるのであるが、それでも、一冊を2時間で読んで理解しようという趣旨は守られているように思う。私は2時間では読み終えられなかった。けっこう丁寧にマーカーを引いていったからである。
 キリスト教のことはあまり詳しくは語られなかったものの、必要最小限は知らされている。ここから、聖書を読むときに、その皇帝やローマ政府の状況を気にする必要も十分あるものだという気がまた起こった。聖書の中にある真理は永遠であるにしても、その記述はたしかに歴史の中で行われたものであるから、蔑ろにしていてはならないと改めて考えるようになった。
 これを契機に、もっと詳しいものも読んでみようという気にさせられるので、手軽な一冊としてなかなか便利で有意義なものであったと感謝したい。




Takapan
ホンとの本にもどります たかぱんワイドのトップページにもどります






 
inserted by FC2 system