本

『魂をいやし、はぐくむ霊的風土』

ホンとの本

『魂をいやし、はぐくむ霊的風土』
折田泰彦
いのちのことば社
\1470
2001.9

 タイトルだけからして、日本で伝道を阻む霊的な問題に触れているのかな、と誤解していた。そんな話題はどこにもない。それどころか、確かにこれは霊的な本であった。サブタイトルが「恵みが伝わる教会形成」とあったのだが、まさにその通りなのであった。
 福岡には、先進的なホスピスがある。元々亀山栄光病院と称したが、今は栄光病院となっている。執筆当時その病院長として活躍する方が著者である。そういうと、これは死に旅立ち行く人のことが書かれているのか、とまた誤解されかねない。もちろんそのことにも触れたい気持ちがあってもいい。が、この本に限って言えば、それはない。全くない。患者と医師などといったレベルの問題も何も記されておらず、ただ読むだけであれば、この著者が通常のビジネスマンであったとしても、違和感を抱くことすらなかったであろう。
 まことに、これは教会形成の本なのである。しかも、テクニックというよりは、ひたすら霊的な、つまり聖書や神から教えられることをどう聴き、生かすかということに焦点が当たりっぱなしなのである。
 この本はいくつか強調していることがあるのだが、一つはデボーションである。はっきりした定義がなされていないので説明しにくいが、単なる祈りとも違う。黙想と限ることもないし、単に聖書を読むということでもない。神の意志を聴こうとするその姿勢をしばらくの時間保つ様子を意味するとでも言えばよいであろうか。だから、確かにそれは祈りでもあるし、聖書を読む一時であっても構わない。ただ、それは常に、神からのものを聴くという方向性であることがどうしても必要になってくる営みなのである。
 そして、ただ孤独だけでそれを続けるというのでなく、少人数の集まりの中で互いに成長していく様子が推奨されていく。この辺りは、かなり具体的な方法にも言及されている。ただし、全般的には、こうした方法ですべしというふうな規定が強く出されている本ではない。
 優れていたのは、著者自身の証詞が詳しく記されていたこと。これがあるために、著者が目の前にいて語りかけるような親近感も覚える。また、たんに福音を人に語ればよいというのでなく、その人との間によい信頼関係を築くのが先決であると本文で述べているように、まず読者との間に、その証詞を通じて、よい信頼関係を築くことに成功しているといえるだろう。きっと、教会を訪ねてくる人との間にも、この本で表されているような姿勢を貫いて、よき交わりを建て上げていっているのではないかと推測する。また、推測できる。
 福岡の教会の牧師をも兼任している著者である。医師であり牧師であるという立場であるが、自分を厳しく見つめつつ、恩寵の中に育まれている様子が目に浮かぶようである。まことに、福音を生きている方であると言える。
 ことさらに日本と西洋を比べて分析をするというふうなことはない。しかし、経験を活かして、この日本の中で人々を教会に導くために大きな力となるような知恵と、信仰とについて、なんだか重要な秘密を教えてもらったような気がした、そんな本であった。




Takapan
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