本

『パズル本能』

ホンとの本

『パズル本能』
マーセル・ダネージ
冨永星訳
白揚社
\2940
2007.7

 私もパズルは好きである。「ヒトはなぜ難問に魅かれるのか?」というサブタイトルは、日本語ならではの問いかけのようだが、たしかにそれだけでもうそそられる。
 しかし、私はパズルに興ずる時間をもたない。どうしても必要があれば挑むが、なにかとやってみたくなるというタイプではない。『ニコリ』のような優れたパズル雑誌片手に高度に知的な遊びに勤しむゆとりが、どうにも、ない。
 世界でよく知られたパズルが紹介されている。それも、たんに問題と答えがあるという本ではない。なぜパズルに魅力を感じるのか、著者自身への問いかけが述べられていくような形で、人類の歴史の中に置かれたパズルの存在価値を確認するかのように、連綿と記述が続いていく。
 この本に、百科事典のような公平さを期待してはならない。あくまでも、著者の関心の深さに基づいている。ヒトはどうしてパズルに……というのは、「オレはどうしてパズルに……」という意味なのだ。
 パズルに少しでも興味がある人で、歴史におけるパズルというものに関心を抱く人がいれば、お勧めする。ただパズルを解いてみたいという人には、お勧めしない。パズルの歴史について、ある程度知識のある人が、通観するのに適していると言うことはできる。私は楽しかった。
 ところで、訳者あとがきの中に、この「パズル」という英語のもつ懐の広さが記されていた。「謎」ということで、日本語で感じるクイズのみならぬものが含まれているというのであるが、私のようにその辺りの事情をよく知って読んでここまでたどり着いた人でなかったとしたら、最後になって、「なんだ、パズルとはそういうものか」とここで謎が解けたような思いがしたかもしれない。
 本当なら、冒頭に掲げておくべき注釈を、最後にもってきたのは、それ自身がパズルであるのか、とちょっと勘ぐってみたくなった。




Takapan
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