本

『オトコの子育て講座』

ホンとの本

『オトコの子育て講座』
青木匡光
教育評論社
\1365
2006.5

 私よりずっと年上の経験豊かな方のようだ。へたな理論をふりかざすのではなく、自分の経験から経験則を導き出している。
 かつての、威厳ある父親の姿を、この時代の中でどうやって取り戻すか、ということに気持ちが向いているかのように見受けられた。
 どのアドバイスも説得力があるし、力強い。この通りに本当にできたら立派なものだ、と感心する。一人息子を立派に育てた自負も感じられる。頑張ったオヤジの話として、聞くに値する。
 が、それが果たして今その通りに役立つかどうかは、分からない。
 子どもと共通情報をもつための「メッセージ袋」は、体験的に推奨しているが、小学校低学年ならいいにしても、それをずっと続けているような体験談は、極めて異例であるように見える。また、子どもの趣味に寄り添うことがどれほどよいことなのか、私は疑問に感じる。
 妻を起こしてでも夫婦のコミュニケーションをとることがよいことだとしているが、そんなことが通用する時代では、もはやない。これも特殊な例だといえる。
 なにより、この父親は、子どもが6歳までは母子関係を見守るだけで、子育てに父親は関わらなくてよいとしている(157頁)。これは甚だしく時代に逆行しているばかりか、母親に一手にかかる昨今の育児問題の火に油を注ぐようなものとして、批判されて然るべきであろう。
 カッコイイ教師ではあろうとするが、手を下す介護者とは決してなろうとしない父親が、はたしてオトコなのだろうか。オムツひとつ換えないような関わり方を、「子育て」とは呼んで戴きたくはない。立派すぎることを並べた本の内容が、この最後のコラムにおいて、すっかり色褪せてしまったことは、残念である。




Takapan
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