本

『音楽の教科書』

ホンとの本

『音楽の教科書』
宮ア里子監修
山と渓谷社
\1890
2009.3.

 子どもにかけるとグンとうまくなる「魔法のひとこと」教えます。
 これがキャッチフレーズのようだ。小学校の低学年から高学年まで使え、学習指導要領を網羅しているというふれこみである。
 これ一冊で分かる小学校音楽のコツとカン。
 そんなことも表紙に書いてある。
 合唱コンクールの指導者として名高い監修者のもとに、音楽が楽しくできるために役立つアドバイスがふんだんに掲載された、親切な本となっている。
 楽器の扱い方はもちろんのこと、体の動かし方、リズム感の養い方など、写真による分かりやすい説明が続く。音というものに対する興味から低学年は始まり、中学年は楽譜が必要に応じて読めるように導かれ、発声のための呼吸法の会得について、ひとつひとつ指導が深まるように配慮されている。鼻濁音のことがきちんと教えられているのがいい。これは音楽に限らず、国語でも気をつけたいところなのであるが、最近の学校ではどうなのだろうか。
 だんだんと楽器も増え、和太鼓などへの関心も誘った後、高学年に至ると、同じ歌うにしてもどう表情や雰囲気を表現するかも課題に入ってくる。楽譜も本格的な学習になるように見え、和音の知識も理解していくことになる。オーケストラから和楽器、アジア楽器など視野も広くなっていくように促されており、楽典や指揮法など、音楽に必要な様々な場面で役立つ知識が展開される。
 小学校の音楽については、どうすれば「できた」ことになるのか、分かりにくい面がある。ペーパーテストもあるのだろうが、むしろ歌や楽器のテストが中心なのではと思われることがある。私もそう思っていた。だが、この本を見ると、何が必要なのか、あるいはどうすればできるようになるのか、よく分かったように思う。鑑賞にしてもふだんの歌唱にしても、子どもたちの発言から表情なども含めて、態度や身体反応まですべてがしっかり教師に見られているという種明かしもこの本には書かれていた。
 確かに、コツとカンを具体的に教えてくれる、またとない参考書であると言えるだろう。小学校における音楽の参考書なんて、なかなかなかものであろう。このシリーズ、ほかに「水泳」「体育」「図工」「家庭科」とあるらしい。「魔法のひとこと」云々はどの教科の本についても記されていることで、さらに言えば「コツとカン」もそうである。ともすれば学科のペーパーテストがすべてのように思われることの多い、小学校での学習である。そうさせているのは受験や塾のシステムであるかもしれない。だが、「生きる力」というものが大切であるとすれば、このシリーズにおいて作られているような実技的な科目を学ぶ意義は大きい。
 個人で揃えるには少し高価であるように感じられるが、内容と効果からすると、妥当と考えなければならないかもしれない。6年間使えるというのは、確かに魅力である。
 このように分かりやすい入門書、あるいはずっとそばに置いていて活用できるものを見ると、自分もこのようなコンセプトあるいはこのような効果をもつ作品をつくりたいものだと感じてしまう。見た目ほどにそれは簡単ではないのだ。




Takapan
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