本

『ひとつ上のアイディア。[新装版]』

ホンとの本

『ひとつ上のアイディア。[新装版]』
眞木準編集
インプレス
\1400+
2012.2.

 コピーライターやデザイナーは、それまでになかったものを産み出すことを仕事としている。後から考えてみれば、そんなことは簡単に思いつきそうに見えるかもしれないが、現実にそれを産み出すということは、ほんとうに大変なことである。いわゆる、アイディア。これは、文化的な営みというばかりでなく、この本に登場する多くの人々のように、企業の宣伝のために働いた産業人である。
 その宣伝を、読者である私たちが、「ああ、あの……」と思い当たるわけであるから、実際に私たちの心にしっかり刻みこまれていたということになる。その企業のことは忘れたとしても、CMは覚えている。そのように人の心に広く遺るものを産み出したのであるから、やはり大した仕事なのである。
 それを産み出すための秘訣というと大袈裟であるが、その人の仕事に対する姿勢や方法のようなものを、かなり明らかにしてくれている。親切というか、ほんとうにそれでよいのかというか、大胆な本である。だからこそ、かなり売れたのであろう。今また、私は電子書籍でこれに触れ、わくわくして最後まで読ませてもらった。楽しかった。
 その内容をここで暴露してはならないと思う。
 ただ、それぞれの一流のデザイナーたちが、現場でどのような出来事を経験し、発案するまでにどのような経過があり、また苦労があったのか、その仕事のありさまをかなり語ってくれているというのが、ありがたい。有名になったその仕事の裏話というものもあるが、基本的には、それを開発する、まさに「仕事」の紹介である。
 私たち読者が、同様に大きな広告業の仕事をするというわけではない。しかし、日常的に、アイディアを出すようなことは多々あるものだろう。仕事でもそうだし、生活の中でも、またスピーチなどの場で語るのも該当するであろうし、そのようにして、ひとに情報を伝達する必要のない人はいない。
 直接的なヒントが並んでいるのではないにしても、こうした体験談は、そしてまた実際にアイディアを出すためのアドバイスというものは、大いに刺激を与える。ただ、それが啓発本の悪しき例として、ただ受け売りをするとか、あるいはまたあまりにアドバイスがありすぎてただ読んだだけで何一つ実行しやしないといかいう終わり方であるのは、もったいないことである。とにかくたくさんノートに書いてみる、というような人の例を見て、実際にノートを用意してひたすら頭の中にあるものをそこに出していく、というような実践を、私たちは何か一つでも、始めてみるべきなのである。もちろん、提案者の言う通りにすべてをするとよいという意味ではない。しかし、始めてみると、自分なりの仕方でそれが実行され、継続されていくことがあるかもしれない。そのときには、自分がまた、誰かにそのアイディアを語るとよいだろう。知恵は、こうして拡がっていってしかるべきなのである。




Takapan
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