本

『現代人の悩みに効く詩篇』

ホンとの本

『現代人の悩みに効く詩篇』
高橋秀典
いのちのことば社
\1500+
2013.6.

 これは効く。確かに効く。タイトルは嘘を言っていない。
 すでに、同じ著者の、預言者の書についての説教集と言えるような本をご紹介していた。ビジネスパーソンを経て後、牧師への道を歩まれた方である。社会組織や世の原理というものを味わった方である。その中で、どこか世俗の空気を十分に感じさせながら、それでも、あるいはだからこそ、追究した聖書の世界の真実を証しし、説き明かしてくれる。それも、聖書の原語の意味を汲みとって味わう方法を多く提供してくれるので、日本語だけしか普通読めない私たちにとって、この著者の解説を見る意味も大きい。教えられるところが多い。
 詩篇はとくに、解釈の分かれる旧約聖書の大きな部分であり、また愛する方も多い。何かと人生の助けになるという声は多いし、新約聖書のイエスのための預言の根拠としてもイザヤ書と並んで多数引用されるところである。ユダヤ人の用いたギリシア語聖書とヘブライ語との相違もかなりあり、その違いが新約聖書へのキリスト預言について大きな意味となって現れてくることもある。そうしたことをも著者は踏まえつつ、しかしあまりキリスト側からすべてを読み取ろうとはせず、詩篇そのものの詩人の視線、そのとき何を言っていたか、ということを大切にする。これがまたよい。詩篇を詩篇として読むということで、まずはよいはずだ。
 もちろん、そこに神との対話があり、神と差し向かいで挑む詩人たちの信仰がある。時に嘆き、恨み、敵を呪うその言葉が、どうして聖書であり、どうして神のことばなのか、と疑問に思う方もいらっしゃるかと思うが、それぞれが神に対しての人間の言葉であるゆえ、神の許にある言葉たちなのである。神が言う、という詩篇もあるが、多くは詩人の告白である。しかしそれもまた、神の手の内にある神のことばとして赦されてここに並んでいる。人の信仰だから人間くさいものだ、と決めつけないほうがよい。
 その詩篇のことばを、必ずしも最初から順に、というわけでなく、雑誌に連載されていたのであろうが、その都度示されたところから取り上げられ、解釈され、読者の人生を励ますメッセージとして伝えようとする。そのひとつひとつがありがたい。そして誰しも世の中で生きている限りは、きっとぶつかるであろう問題や困難、絶望感なども含めながら、その中で詩人の心とつながるものが見出せるように配慮してある。ここには人生論が詰まっている。その実例を挙げればきりがないほどである。
 これは手に取って、何の損もない。誰の人生にも、助けになりうるものを含んでいる。それはまた、聖書というものそのものが、誰をも助ける力をもっているということの証拠でもある。詩篇を味わう本は少なくないが、学術的になったり、逆に上滑りになったりするものも目立つ。その中で、原語をも扱い、著者自身の迷いや失敗も証しされる、骨太の言葉がぐいぐいと迫るものとして、そして分かりやすいものとして、これは安心してお勧めできる本のひとつであると言ってよい。




Takapan
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