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『今、聖書を問う。国際聖書フォーラム2006講義録』

ホンとの本

『今、聖書を問う。国際聖書フォーラム2006講義録』
日本聖書協会編
日本聖書協会
\3333+
2006.9.

 もう10年も経つと、入手ができないというのは、昨今の出版界の必然的なジレンマであろうか。当時このフォーラムについて私は無知であり、今知ったときに、ぜひ内容を分けてほしいと思ったのだが、あいにく書物として流通していない。探すと、古書の分類の中で見出され、元の定価よりも安く入手できたのは、運が良かった。
 すでに過去の議論であるかもしれない。当時の最先端も、今となっては過去となり、時に間違った路線がそこに紹介されているのかもしれない。しかし、見たところ、ここに提示された問題は今なお全く解決の糸口さえないような場合もあるようだし、放置されている問題もあるような気がする。
 しかし、内容的にも分量的にも、読み応えがあった。というより、骨が折れた。かなり専門的な聖書学者の専門的な議論が延々と続く場合もあり、ついていけないと思われるものもあった。他方、説教のように優れたメッセージ性をもったものもあり、礼拝に出ているような気持ちになったものもあった。どちらが良いとか悪いとかいうのではない。神に従おうとするすぐれた知性と感性の持ち主が、賜物を活かして分かち合いに臨んだということである。どれも、恵みであり、どれも、ありがたかった。
 今いろいろな面でトップに立ち活躍している人の名前も見える。当時からそうだったのだろうが、今にしてみれば、すぐれたメンバーがここでも活躍している。なかなか全部を同じように味わうことはできないだろうと思われるが、それぞれに面白みがあり、役立つところがある。読者が自分に合わせて楽しんでみてはどうだろうか。また、それだけの価値あるフォーラムの記録である。
 正誤表も入っていた。多々間違いがあるが、それだけよく調べてくれたということでもあるし、これだけの内容であるから、急遽作った本であることを考えると、むしろ少ないほうかもしれない。また、見ただけで明らかに分かる間違いは見過ごして可だと思われるので、このあたりも誠実さが見られる。私は古書で入手したが、前の持ち主は、書き込みらしい書き込みはしていないのだが、この正誤表に従い修正は書き込んでいるところが多数あり、几帳面に読んでいたのだなあと感心した。
 ほんとうに多用な内容であった。私見では、終わりのほうにまとめられているもののほうが、読みやすかった。どうしても全部読みたいという私のような人には、最初からの辛抱が、最後にほっとするものをもたらす。全部を読む義務はないとお思いの方には、どこでも自分の関心のある内容から選んで読めばよいだろう。だが、できるならやはり、ある程度何らかの考えを以て掲載順序が決められているのであろうから、読み飛ばすことは有りだとしても、ある程度前のほうから見ていくとスムーズに読めるのではないか、とも思われる。
 聖書についての、世界の声である。世界会議というからには、世界的多角的視点がちりばめられていることになる。中国の聖書の歴史など、アジアの視点もあった。日本における翻訳の文化もあるなど、身近な歴史も教えられる。また、カトリックや正教会などの視点も入れられており、エキュメニカルな理解の助けにもなろうかと思われた。その中で、カトリックの方のメッセージには、福音的に涙が出そうにも感じられた。
 声を交わらせるのはいい。思い込みや偏見から解放される。共に祈ればいい。国際聖書フォーラムは、聖書を中心にすべての兄弟が祈り合うという空間でもあった。




Takapan
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