本

『ミニブタ飼いになる』

ホンとの本

『ミニブタ飼いになる』
小林茂久監修・平林美紀撮影
誠文堂新光社
\1680
2010.2.

 日本でブタを飼う人はそう目にしない。
 が、アメリカではわりと多いと聞く。ブタをペットとして飼うことについてのノウハウが、広く知られているようである。また、それを可愛いと感じる心があるようだ。そういうブタを主人公にした映画もヒットするくらいだ。
 価値観や審美観のようなものもあるだろうし、動物を飼うことのできる環境のようなものも影響しているのではないかと思う。日本の家屋で飼うというのは、一般的に言って簡単ではないからだ。
 ブタというものに対する認識もまた違うことだろう。そのあたりは、詳しい人の意見や現地の人の声を参考にすべきだろうし、私がとやかく言うことではない。
 ブタのぬいぐるみが我が家のペットになって以来、ブタ、とくにこぶたについてはけっこう注目している。そんな中、ついに、こぶたをペットにするための本を見つけたので、うれしくなった。そもそも、書店に行っても、ブタを飼うための本はペットコーナーには見当たらないのが普通なのである。
 可愛い、可愛い、という写真集ではない。れっきとした、飼い方のための本である。だから実用的である。あまり知られていないその飼い方、注意するべきことなどが、きちんと掲載されている。価格も手ごろで一般のペットものと並べられておかしくない程度であるから、案外これは歓迎される本となっているかもしれない。ただ、すでに出版されてしばらく経っているから、反響があったような話は聞かないが、ネットで見る限り、概ね本に関しては好評のようだ。そして多くの人が、本として可愛いし内容もないと賞讃しているのに対して、実際にブタを買える環境になかなかなれないということを実感したようにも見えた。
 だから、今のところ、こぶたを実際に飼えるというのは、ちょっとしたセレブであり、ステイタスシンボルでもあるかもしれない。可愛いと思う気持ちはだんだん拡がっているのだが、現実に飼うのは難しいということだ。
 それにしても、ブタに関する偏見や誤った認識というのは、実際多々ある。ブタは汚いというのも違うし、アレルギーなどの原因にもならないらしい。豚小屋、などという表現は、実際のブタの住まいについては当てはまらないのだそうだ。
 イノシシから家畜用として人間に身近な動物となったブタであるが、あまりよいようには思われていない。古来中東では、ブタは汚れた動物のひとつであったし、聖書でもブタというのは汚れに関するものとして登場する。病原菌などの影響もあって、食用として不適切であったせいかもしれないが、逆に言えば、当時からイノシシではなくブタが飼われていたのである。ブタ飼いの話もある。
 そんな背景もさることながら、問題は、このブタに可愛さを覚えるかどうか、人間の友として自分が捉えるかどうか、という点だけだ。この本には、ちょっとした写真集と言ってもよいくらい、その魅力も十分表現されているので、見ていても飽きない。もちろん、実際につき合うための知識に関しても申し分ない。
 ところで、日本でブタの絵を描くと、まん丸の顔に大きな鼻、小さな三角の耳となるのが普通だが、実際のブタを見ると、決してそんなことはない。これは、タヌキの絵についても言える。日本風のデフォルメではあるのだろうが、実際の姿とずいぶん食い違っている。ブタの顔は、実のところ、かなり長いし、耳も比較的大きい。このあたり、今後思い込みから解放されて、洋風なブタのイメージになっていってほしい、と私などは思うのだが、余計なお世話だろうか。




Takapan
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