本

『鉱物の不思議がわかる本』

ホンとの本

『鉱物の不思議がわかる本』
松原聰監修
成美堂出版
\1470
2006.12

 こんなにきれいでこんなに分かりやすい解説の本が出版されていることを、うれしく思う。
 すべての鉱物が写真で紹介されており、基本的な性質も掲げられている。表向きには図鑑だとは書かれていないけれども、立派な図鑑である。
 ダイヤモンドのでき方やその人工物、化粧品や画材としての石から、アスベストについても、最初のほうに、興味深い紹介の仕方がしてある。宝石の宝石たる所以や、鉄の生産や錬金術など、私たちが思いつく限りの、石についての話題が紹介されているのだ。
 それからは、鉱物についてのレクチャーと、図鑑である。中学で、火成岩についてひととおり習ったならば、十分楽しむことができるであろう。しかも、そうとうに専門的に。
 最後には少しであるが、採集についてのアドバイスや資料がふんだんに載せられている。興味をもった人は、これ一冊あれば、しばらくの間何も要らないふうにできていると思う。
 とにかく写真が美しい。これほどの上質の本が、こんなに廉価に提供されるとは驚きである。面白い、楽しい、という好奇心を育むのは、やや地味な試みであるかもしれない。人間は、儲かること、金を得る仕組みについては興味をもつが、金儲けにならないことについては、見向きもしない面がある。それが、理科離れという現象に現れている。しかし、これは自然から大きなしっぺ返しを食らうであろう。無知のために、悲惨な結果をもたらすことに、厚顔にも加担しているのが、現代人だと言えるのではないだろうか。
 生き物もすばらしいが、鉱物にも、愛着がわいてくる。そんな本である。




Takapan
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