本

『味覚と嗜好のサイエンス』

ホンとの本

『味覚と嗜好のサイエンス』
伏木亨
丸善
\1995
2008.4

 本は「京大人気講義シリーズ」の一つだそうである。中高生が聴いても面白いと感じることが狙いである、というのはこの著者の考えだが、その通りだと思う。難しいことを簡単に説明する、それが一番難しいのだ。
 さて、この味覚の問題。子どもたちがおかしくなっているのは、味覚というよりも、嗜好のことだろう、とあるのだが、私は味覚の部分もあるように感じる。生物的に支障がある例が多くなってきているように感じるのだ。
 が、それはともかく、この味覚については、実はまだよく分かっていないそうなのだ。その分からないということを丁寧に伝えるのも、実に難しいことだろうと思う。分からないから何も説明しませんよ、というわけにはゆかないのだ。どこまで、あるいはどこから説明すればよいものか。味覚の不思議については、分かりやすい実例を含めて、よく教えてくれる。
 もちろん、ある程度の専門用語あるいは高校の生物の授業程度の知識などが要求されるものだとは思う。しかし、「おいしい」と思うのは何によってなのか、ということなど、単純なようでなんとも説明がつかないものらしい。
 コクとキレ、辛口の甘口など、酒をはじめとするものに使われる言葉の意味を、こんなにも分かりやすく述べた本も珍しいと思う。
 辛みが味というよりはむしろ痛覚であることなど、興味深い話題もたくさんある。可哀想ではあるが、実験動物に酒を飲ませて云々という話も、想像するとなんだか楽しい。
 だしや旨みの秘密も、面白い。
 酒のつまみに塩辛いものというのは何故か、ということも、理由が明確に備わっていることであった。どうぞその内容については、本書をお読みください。
 日本の料理の優れているところを、客観的にも伝える力をもっている著者である。幼児期にかつおだしに馴染ませておくことの意味が大きい、などと言われると、野菜スープをたんまり飲ませていた私は、たしかにJr.3を野菜好きにしたものだと気がついた。子どもが小さいときの食事が大事であることを意識していて、よかったものだと思う。




Takapan
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