本

『メッケもん!』

ホンとの本

『メッケもん!』
桂文我
ポプラ社
\1680
2006.10

 骨董屋は私はよく知らないが、古本屋ならよく知っている。京都では大学のそばには必ず古本屋があり、またある通りには古本屋が軒を連ねているというところもある。河原町通にさえ、古書店はちらほらと。
 近年、それが怪しくなり、古本と聞くと、殆ど重さで買取り、一律定価の半額からスタートといった量販店のことしか知らない若者が増えているらしいので、悲しい気がする。目利きの店主と、必要とする教授や学生との知恵の張り合いのような価格競争など、知る由もないだろう。
 さて、この著者たる落語家、地方に行けば必ずこうした店を巡るという。何かともう買いたくなって仕方がなく、珍しいものを見つけると必ず買ってしまう。その有様が、「中洲通信」という本に連載され、ここに加筆修正してまとめられた次第である。
 もちろん、これは芸の肥やしである。園芸に関するものを集めているはずなのであるが、自分の子どもの頃の思い出に関わるものになると、もうその血の流れを誰も止めることができない。
 こうした古い品々との出会いやそれへのこだわりなどを、端から見ているだけでも十分面白いのだが、その古書店の主人との心の通い合いやつながりなどが、たんなる人情と呼ぶことのできないほどの厚み、あるいは熱みをもって、伝わってきたと感じたのは、私だけではないであろう。
 まさに、そんな心に気づかせてもらい、メッケもん、なのであった。




Takapan
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