本

『Life パパは心の中にいる』

ホンとの本

『Life パパは心の中にいる』
飯島寛子
新潮社
\1260
2007.7

『天国で君に逢えたら』という本がよく読まれた。そしてこの夏、映画にもなった。
 プロサーファー飯島夏樹さんが、癌宣告を受け、亡くなるまでに綴ったもの。四人の子どもたちと愛する妻との心の交流が、涙を誘う。いや、それは決して他人事ではない。もしかすると、私たちは、死に対するひとつの理想を、この本から見せてもらったのかもしれない。
 夫を2005年に失ったが、彼女は心の中に希望がある。まだ子どもたちを育てなければならない責任や、そばに夫がいる感覚、それから、いつか天国で逢えるという確信。そんな生活の中から、勧められてブログに書いていたものを、その後の雑感というふうなものとしてそのまま本にしたのが、この『Life パパは心の中にいる』である。
 今度は女性の立場からという視点で、たぶん女性の読者にお勧めであろう。ブログが元であるということで、物語の統一性がなく、断片的な記述に留まっているために、通読していくと、話の前後や飛躍に時折戸惑うことがあるが、そもそもが別々のエッセイなのだと割り切るならば、ずっと読みやすくなるだろう。なにより、その一つ一つに、夫への愛情と子どもたちとの現実とが歩みを支えている様子がはっきりうかがえて、好ましい。また、固い土台の上に立っているその生き方が、たんにお涙頂戴でもなければ奮闘記でもなく、自分の人生が希望に満ちていることを示しているから、読む側も勇気づけられていくのであろう。
 ときおり、このように、亡くなった家族を回想し、あるいは天国で待っててねみたいな文章を見るわけだが、しばしば観念的な感覚を読んでいて覚えることもあった。「天国」という言葉が何を意味しているのか、書いている方の中にイメージがないと感じられるときである。そこへいくと、この飯島さんの場合には、明確なイメージがある。グアムやハワイという地に暮らしていることもあるが、彼女たちは聖書を信じている。キリストは人生の土台だということが、新約聖書の中にもあるが、まさにその確固とした地盤の上に、希望が根付いているということなのだろう。
 夏樹さんの映画や本のファンの方はもうこの本はご存じだったかもしれないが、奥さんの側からの視点は、いっそう彼の心を浮かび上がらせてくれるものとなるのではないだろうか。




Takapan
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