本

『光の降誕祭』

ホンとの本

『光の降誕祭』
R.ランダウ編
加藤常昭訳
教文館
\2400+
1995.11.

 少し古い本だが、まだ十分購入可能である。副題に「20世紀クリスマス名説教集」と付いている。ドイツ語圏の説教が集められている。すべて、クリスマスのメッセージである。
 カール・バルトやフォン・ラート、ブルトマンといった、ともすれば神学論文や聖書研究の場でしかお目にかかれないような名前がそこにある。なんとそこに福音の説教がなされていることか、と目を開かれる。訳者の加藤常昭先生の親交あった方々の名もあり、トゥルンアイゼンやボーレンといった、翻訳に携わった名著の主も見られる。ブルームハルトが実際に語った説教を見るとなると、一読者としてすっかり昂奮してしまう。
 中には、未公表の説教もあるというから、編者も大したものである。そしてこれを遙か日本で誰にも読めるような労をとり、比較的安価で出版する努力をしてくれた訳者や出版社にも敬服する。
 クリスマスの暖かな空気が、読んでいる最中ずっと私の周りを取り囲んでいた。美しい絵画の挿絵が多く入れられているのも、その暖かさを伝えた。これだけの装丁と内容だと、読後感もただならぬ満足感がある。
 もちろん、ルカ伝のクリスマスのエピソードは、クリスマス説教になくてはならないものであろう。ヨハネ伝やイザヤ書も、クリスマスにはおなじみである。しかし目を開かれたのは、民数記から語られるクリスマスメッセージや、とくに黙示録である。クリスマスの捉え方が自由で広いということを、改めて教えられた次第である。
 また、同じルカ伝でも、語り方や視点が、実に新鮮である。ドイツ流というのもあるかもしれないが、遊びがなく、ストレートに、しかしソフトに忍び寄りながら聞く者の心をえぐるように迫る。これらが、第二次大戦以前から語られていたのかと思うと、また感慨深い。現代にそのまま通じるではないか。中には、ヒトラー政権を背景にした説教もある。だが政治的な主張をしているのではもちろんない。それがいま読む私の心に深く刺さるというのはどういうことなのだろう。現代は過去から進化したものであるとは言えないということを物語らないだろうか。
 こうした名説教は、一度にいくつも続けて読むものではない。一日にひとつ味わい、一日それを噛みしめていたい。そうなると、一日10〜20頁ほどを読むので、そう長い時間を要するものではない。できるだけゆっくり読んでいきたい。そうして、全部で20篇あるということは、これはお勧めだが、アドベント期間に、一つずつ聞いていくと、読み終わってからクリスマスを迎えることになる。きっと、例年と異なった、胸に何かがいっぱい詰まったような、平和なクリスマスを迎えることができるのではないだろう。まさに、心の中が光で包まれるのであり、その光は、願わくば私の全身を照らし、周りを照らすものとなってほしいと切に願うものである。




Takapan
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