本

『古典ラテン語文典』

ホンとの本

『古典ラテン語文典』
中山恒夫
白水社
/\5880
2007.9

 ラテン語を、一年間だけ学んだ。何がどうなるというほどのものではなかった。哲学をする上で、教養のつもりでもあったが、ラテン語への接し方なりとも学んでおいて、損はないと考えていた。
 ギリシア語と併せて学んだが、こうした講座は当時三人くらいの学生しかおらず、一人休むとしわ寄せがきつかった。ただ、教授も厳しく特訓したり意地悪をしたりするつもりもなく、初心者たちに優しく接してもらって感謝している。
 英語からドイツ語、そしてラテン語、ギリシア語と、一種のルーツを辿るかのような歩みで、こうした古典語を学ぶことにより、だからドイツ語はこうなのだ、とか、だから英語はこうなっている、とか気がつくことが多い。それが大きな収穫であったかと思う。
 今こうして、立派な文典が出版された。当時は、岩波の限られたテキストしかなかったが、今はこうして優れたものがどんどん出版されている。著者にとり、この本は会心の作ではないだろうか。昔は省略されていた、さまざまな配慮がよくなされていて、ラテン語への教養も増すことができるような工夫も多い。
 分厚い文典である。特長は、私のような素人目から見てのことだが、古典からの例文の豊富さであろうか。文法事項の簡潔なまとめと、必要な点にはきっちり触れているという配慮もうれしいのだが、ラテン文学からの実例が項目毎にたいへん多く集められて紹介されている。生きた使われ方があってこそ、文法の説明は意味をもつ。語学は数学公式とは違うのだ。
 これからラテン語を学ぶ学生には、お勧めしたい。値段分の価値は十分にある。




Takapan
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