本

『強迫性障害のすべてがわかる本』

ホンとの本

『強迫性障害のすべてがわかる本』
原田誠一監修
講談社
\1260
2008.11

 このシリーズを、何冊か紹介してきた。「すべてが……」というのは誇張した表現には違いないが、たしかに分かりやすくて、読みやすい。見開きで完結した項目の説明も、そこにイラストで直感的に把握させ印象づける内容や方法も、相応しいと思う。さらに言えば、この価格も手ごろである。
 その応対も、穏やかで、落ち着いて対処できるように配慮がしてある。なにぶん、心理的な問題である。嫌悪感や拒否感を与えるような本であってはなるまい。冷静に、事態を捉えて対処するように向けて配慮してある。おそらく、メンタルクリニックなどの現場と同じ手法がとってあるのだろうと推測する。
 ガスの火を止めたかどうか、何度も何度も確認する。慎重にするために見直しをするのは悪いことではないが、これを繰り返すと、一歩も先へ進めない。それに、そのことだけでなく、生活の様々なことで、「これでよかったのか」「失敗したのではないか」と、あらゆることに確信がもてない不自由さをもつことになる。
 それは、本人も辛いが、周囲の人にも影響を及ぼすことがあるという。清潔にしないと部屋に入ってはならない、と無下に遮断されるなどすると、日常生活に支障を及ぼすことになる。それをまた険しく意見しても、事は解決しないので、家族の側もまた、それとどう向き合っていくか、知恵が必要となるのである。
 とにかく、分かりやすい本であると思う。何かしら心当たりのある人は、こういう本を開いてみるとよいのだろう。親切で、取り組みやすい本ができる時代になったものだ。たぶん以前であれば、偏見がもたれたり、即座に非難されたりすることで終わっただろう。一人一人に寄り添うような向き合い方を、誰にも教えてくれるというのは、いいことだ。
 日常生活に問題が発生するという意味で、障害ではある。しかし、罪悪感を覚えることが悪いとは思えない。それがないケースが、あまりにも多い。たしかに過度になると先へ進めなくなるが、あまりにも無邪気に人を傷つけることの多い世の中である。罪悪感を覚える心優しい人々こそ、むしろ健全なのだというふうに、認められる世の中であってもいいのではないか、という気さえする。
 ただ、自分で何もかも完全にしよう、完璧にこなそう、というのは、たしかにしんどい。信仰の世界にも、こうした心理的問題との関わりがたくさんあることは間違いない。聖書の内容はもちろんのこと、メンタルヘルスについても深い洞察がなければならない牧職は大変なのだろうと思う。




Takapan
ホンとの本にもどります たかぱんワイドのトップページにもどります






 
inserted by FC2 system