本

『昆虫の雑学事典』

ホンとの本

『昆虫の雑学事典』
阿達直樹
日本実業出版社
\1470
2007.5

 虫を愛する人は少なくない。知り合いにも一人、凄い人がいる。その知識たるや、ただものではない。
 この著者もまた、そうした一人であろう。本として注目に値するのは、その虫を愛する心もさることながら、電子顕微鏡写真である。クワガタムシの耳だの、スズムシの発音器官だの、スズメバチの針だの、これは何、と思えるような写真がはじめのほうに並んでいる。
 しかし物珍しさを眺めさせるばかりでなく、6本足には見えない昆虫の話や、カナブンとコガネムシとの違いや、そもそもクワガタムシとはなんぞやという話など、昆虫好きにはたまらない話題と写真が次々と紹介される。いや、そもそもマニアの方々は、とっくにご存じのことのはずで、たんに素人が感心しているといったことなのかもしれない。
 それでもいい。好奇心を満足させる、楽しい本であった。ブームを意識してか、クワガタムシやカブトムシについて多くの頁が割かれているのも、楽しさのためには賛成である。
 最後に、昆虫を移動させることの危険性が訴えられていた。生態系を崩すという程度の説明ではなく、何がどのようになっていくのかが丁寧に語られ、種を絶滅させることになるのだ、と警告もしている。だが、無邪気に善意と思いつつ昆虫を増やそうとあちこちに放すような人は、少なからずいるような気がする。ホタルについては、最近新聞記事でその問題性が指摘されていたが、もっと多くの人に認識させていく必要があると感じた。
 交尾の後にオスを食うなどというカマキリの習性の嘘なども、この本では多く正されている。それも、実際のフィールドワークによって、多くの虫たちと直に触れあった結果である。
 著者は、中学校の先生なのだという。おそるべし。




Takapan
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