本

『一瞬で心をつかむ 笑声力』

ホンとの本

『一瞬で心をつかむ 笑声力』
成田万寿美
PHP研究所
\1470
2009.7

 CDまで附録としてついてくる。お得である。
 タイトルは造語。笑顔の見える声を表すのだそうだ。
 そもそも自分の声というものは、嫌なものである。自分で内部の骨を伝って聞き慣れたものが、実は他人に聞こえているものとは違うと知ったときの、あのへこみ方といったらありゃしない。テープレコーダーで聞いた自分の声に、なんだ、この変な声は、などと恥ずかしくなり、落ち込んでしまう。
 私も相当のコンプレックスがあった。だからまた、人前で話すのが嫌いだった。苦手だった。それが今や人前で喋る日常を過ごしているというのは、なんとも不思議である。  人は見た目が大切という教訓も世間に広まっている。第一印象がどういうふうに与えられていくかというと、やはり見た目は重要である。同時に、声もなかなか重要ではないだろうか。それは、声色という物理的なものではなく、その人となりを表すものとして、声色や気配、あるいは昔はそういうのを「物腰」と言ったが、それがその人を決定的に印象づけることになる側面があるからである。
 声の高さ、声の調子、それはその人がどう自分に対しているかを表す。明るい声、暗い声、それはちょっとした自覚でずいぶん変わっていくものである。つまりちょっとした自覚で、相手に与える印象はまるで違うということであり、ビジネス関係の人や接客業、とにかく人に対する仕事をしている人は誰でも、この声という問題は大切になってくると言えるだろう。だのに今まで、着飾ることはしても、声の調子を考えよう、という提案はあまりなかった。もったいないことだと思う。
 発音のコツから、ふだんの生活の中で気をつけること、言葉の素人的なトレーニングや、言葉そのものの選び方といったことが、この本の内容である。
 まず腹式呼吸という大きな課題から入ってくるが、本を読んだだけですべての人がうまくそれを活用していける、とは思わない方がよいかもしれない。
 顔の表情ももちろん大切である。同時に、言葉遣いというもの、それから、その言葉を乗せる道具としての声というものは、人との交わりに大きく影響するものと思われる。スマイルは、アメリカの政治家にとって極めて重要な要素であるという。専門家が、政治家の笑顔をつくるためにはりついているともいう。そうした笑顔をある意味で作れるというのならば、声色だった、作れるものだ。
 クリスチャンもまた、背筋をピンと伸ばして、明るい声でふだんの生活を送りたいものである。
 なお、筆者は、その記す内容と同様に、決して飾らないが、要所はぴしっと締めた書きぶりである。言葉の選び方や、説明の仕方など、素朴で誰もが読みやすい文章となっていると言える。つまりは本の内容を、筆者自身がまず実験してみているのだ、というこの宣伝方式も、なかなかのものである。腹式呼吸の説明も、こんなに素朴でこんなに分かりやすい説明は、私は見たことがない。




Takapan
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