本

『週刊こどもニュース2011』

ホンとの本

『週刊こどもニュース2011』
NHK「週刊こどもニュース」プロジェクト編
NHK出版
\997
2010.11.

 長い間続いた「週刊こどもニュース」も、ひとつの役割を終える。
 その初期、私はこの番組を楽しみに見ていた。池上彰さんは、この番組で広くその才能が認められ、社会的に大きな働きをなすようになった。
 とにかく、小学生あたりのスタジオの子どもたちに、ニュースの意味を納得させないといけない。話し方ももちろんだが、語彙を選ばないといけないし、何よりも、そのニュースの本質を正確に伝えなければならない。
 よく、難解なことばかり話すのは、実は本人にもよく分かっていないのだ、と言われる。複雑で深いことを、やさしいことばで説明することこそ、難しいのである、と。
 事のすべてがそうとは限らないが、だが概してそうであるさまを見聞きすることはしばしばである。へたに哲学などかじると、難解な用語が飛び出しやすくなることを、身を以て確かめた次第である。
 2011というタイトルは、2011年のニュースを集めたわけではない。発行は2010年11月である。内容は、10月が少し入った程度である。だのに、2011などと示すのは、まるで3月初めに4月号を売り出す月刊誌と同じ心理であろうか。それはともかく、2010年の出来事やニュースを、この本を開けば、そうだったと改めて思い出す。これを全部列挙できる人は大したものだろう。
 だが問題は、ここに取り上げられた項目の内容を、自分が子どもに説明できるのか、ということだ。いや、はっきり言おう。自分は分かっていたのか、ということだ。概略はもちろん分かっている。だが、ニュース解説番組も、まさに解説というか、意見を述べることが多くなり、事の次第を事実としてサッと伝えてくれるようなタイプのものがあまり見られないような気がする。ネットでニュースを見ていると、何かとリンクがあり、その事柄の事実や原理の部分を的確に知らせてくれる情報に近づくことができるが、ふつうの番組や新聞ではいまさらのように基本的な部分については、いちいち教えてはくれなくなる。
 案外おとなも、分かったふりをしているだけなのではないだろうか。
 だから分かりやすい解説の雑誌や本を探してみても、多かれ少なかれ一定の見解に基づいた思想と化しており、実のところ分かりやすい説明にそうそう出会えるものではないことが分かる。出会ったって、意味が説明してあるラッキーな記事にお目にかかることはあまり期待できないであろう。
 子ども用である、こどもニュースのこの小冊子は、そういう場合にまさに役立つ。要するに詳しすぎなくてよく、ここに記されている筋書きを把握しておけば、新聞そのものも読みやすくなり、続く記事の意味がよく分かっていくことだろう。子どもに尋ねられたときにも、子どもに対して分かりやすく説明することができて、子どもたちの尊敬を集めることにもなるだろう。
 ものの道理について、このように分かりやすく説明をすることが必要だということに、多くの人も気づいている。一時、「サルでもわかる○○」という本が流行した。しかし、その中には、サルどころか、へたをするとご本人にもよく分かっていないのではないか、とすら思われるものもあった。説明が分からないのは、読者である自分のほうが頭が変なのかと悩むものだったが、どうも必ずしもそうではないらしい、というからくりがうっすら見えてきたのだ。
 ご安心いただきたい。このこどもニュースの解説は、なかなかいい。勉強になりました。




Takapan
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