本

『聖書時代の古代帝国』

ホンとの本

『聖書時代の古代帝国』
クレマインド文・絵
藤本匠訳
いのちのことば社
\1800+
2014.12.

 マンガで、聖書を紹介する企画も、この時代なかなか多い。活字離れなのか、すでにマンガに囲まれて生まれてきた文化的影響なのか、そういう分析はともかくとして、マンガだからこそ瞬時に理解でき、あるいは心に残るということはありうるものだと私も思う。手話が、音声でなく視覚的な情報伝達であることで、音声以上のものを一度に伝えることができる場合があるのと同様に、マンガもまた、形のない文や言葉で伝えづらいものを簡単に伝達することかできるというものであろう。
 さて、旧新約聖書のマンガがある。とにかく底本がしっかりしている。キリスト教の歴史のマンガがある。世界史、日本史ともに、一定の本があり広く知られている。ところが、比較的薄いのが、旧約聖書と新約聖書との間をつなぐ時期、いわゆる中間時代と呼ばれる時代である。ここは、西洋ならある程度の文化がある。それでも、プロテスタントにはそこが聖書として扱われていないために、一般的ではないと思われる。日本だとなおさらである。
 しかし、旧約聖書が新約聖書のキリストを預言していると固く信じているならば、この中間時代を見逃すわけにはゆかない。キリストもまた、この中間時代の資料、すなわち新共同訳聖書で「続編」と称している箇所の内容に触れていると思われるのだ。マラキ書からマタイ書を結ぶものが、線となってつながるのである。
 この部分を、マンガで紹介するというものは、なかなかなかった。しかも、やたら劇画調で感動を迫られても困るわけで、歴史を理解したいという場合、その複雑な大国間の関係を、淡々と印象的な紹介で次々に示していかなければ、分かりやすいとはいえないものである。ギャグ漫画と言ってしまえば元も子もないが、そのくらい軽い調子の絵で、時に内実をオーバーに、そしてまた単純に伝えてくれるのであれば、きっと分かりやすいものとなるだろう。
 そういう読者の意図を読みきった形で、韓国の漫画家が聖書を、そしてこの続編部分を取り扱ってくれた。実に広く深い聖書や歴史の知識と、全体的な理解がなければできるものではない。専門集団だというその著者たちが、渾身の力をこめて、また多大な労苦と時間を捧げて、ここに一大歴史展開のストーリーが完成した。
 楽しい。よく分かる。私も、続編は幾度となく読んでいるが、このマンガで初めてすっきりと分かったことも多かった。それは、続編は個人の視点で物語が語られているが、このマンガは、その背景にある大国の思惑がいとも明らかに示されているからだ。キュロスがバビロン捕囚からユダヤ民族を帰還させたことは、聖書からすれば油注がれた者と神が任命したという信仰的視点で説明は終わりなのだが、このマンガだと、エジプトの牽制のために用いた政策だと説明してある。こういう解説は、続編そのものには描かれていない。
 マンガの紹介する時期は、このバビロン捕囚直前から始まり、キリストを待つようになったユダヤの民の期待の中で幕を閉じる。構成もよいし、内容も豊富である。また、続編だけでは説明が足りないところは、ヨセフスの著作の助けも借りて説明を施している。とにかく歴史的に史料にあたり確実な情報を提供しようともしているわけで、信頼性もある。学びのためによいし、これを許にまた、続編を読むと、きっと理解が違うことだろう。
 マンガだから軽いということはない。マンガに単純化するというのは、よほど深く理解しないとできないことなのだ。決して割安ではないが、これは学び会のテキストとしても役立つことだろう。マンガだから、読み直しもする気になる。幾度も見れば、歴史にぐっと詳しくなることだろう。これは確かにお勧めである。




Takapan
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