本

『危険から身を守る本・日常生活編』

ホンとの本

『危険から身を守る本・日常生活編』
山谷茉樹
創元社
\945
2010.11.

 先に紹介した、「自然災害編」の姉妹編。
 従って、本の意義や形式などは同様である。
 内容が、日常生活に絞ってある。災害というと、いわば外的な原因である。人知の予測がつかないものとして発生するとはいえ、それは私たちの外から襲ってくる。それに対して、実のところ私たちが出会うであろう、殆どの事故は、人間の内部に突然起こってくるものであろう。
 この本では、まず一般的に、そういう事態に遭遇したとき、何を反射的に行うべきか、そこから入る。これはよい構成である。非常事態に、原理とは何か、善とは何か、そんなことをごちゃごちゃ言っている場合ではない。まずは、救うこと、助けることだ。呼吸があるのか、人工呼吸をしなければならないか。鼓動はあるか。心臓マッサージが求められるのか。危機管理のためには、まずこのように突発的な自体に備えて、まず注目すること、調べてみることが、的確に挙げられなければならない。
 従って、本でもまずそういったところから入る。救急講習会などで、人工呼吸や心臓マッサージの仕方が学んだ人もいるかと思う。が、全くそういうことを知らない、という人が圧倒的に多いことに、著者も悲嘆している。どうして、愛する人を守ることができるかもしれない方法を、学ぼうとしないのだろうか。関わりたくないとでもいうのか。しかし、自分がしなければならない場合だって、ありうることではないか。
 状況は様々に予想される。お年寄りが浴室で倒れた。のどに異物が詰まった。はなぢが出た。こういう、日常的なことや日常の中で起こりうる重大事項などが、次々と挙げられる。その都度、どういう行動を起こすとよいのか、適切に指導していく。この本の真骨頂である。
 ガス中毒や誤飲、過呼吸など、ありうる事柄それぞれに対して、なすべきことや、してはならないことが知識として伝えられているだろうか。知らなくてよい、などと思う人は、きっと保険になど入らないのだろう。まさか、という時に役立つことに関心を寄せないでいられるのは、自賠責保険も無視しているようなものではないだろうか。
 自宅の中で事故が起きるとは限らない。外では、たとえば近年AEDが行き渡るようになってきた。その使い方も、触れられる。ありがたい。熱中症やアキレス腱断裂など、突如起こりうることへの知識が加えられる。
 そして、アウトドア活動の中で起こる可能性のあることが並ぶ。山道は下らず上れ、というのは、どうしたかと疑問に思うのだが、上ったほうが道が一つに集まる、または大きな道路に出会うのだといい、サバイバルでは大いに役立つ認識ではないだろうかと思う。
 最後に、より日常生活におけるとして、カード被害について、弁護士費用についてなど、ありうる項目が並べられる。これもありがたい。
 このように、日常生活の中でありうることや起こっても仕方ないようなことがこの緑の表紙の本には収められているのであるが、より実践的な必要のために、と、赤い自然災害編にあった点もまとめて紹介している。これまたありがたい。頭を守れなど、咄嗟の命を救う行動が一目で見渡せるように並べられている。
 これはやはり備えだ。いのちを守るための知識は、いくらあっても不要なことはない。あまりにひとまかせで、誰かがしてくれるだろう、の精神に満ちている社会に、なんとか自分も責任者として行為しなければならないことがありうのだ、という当たり前のことを浸透させなければなるまい。
 私は、高校生のときにけっこうみっちり救助法を学んでいる。もちろんそれで十分だなどというつもりはないが、何も知らないのではない、ということにおける安心はまた違う。いざというときには、何でもやりましょう、という覚悟と共に生きている。その伝家の宝刀を使わないに越したことはないだろうけれども、それでもやはり、知っていることは大きい。人間は、たんなる羊ではない面があるのだろう。




Takapan
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