本

『はじめての刑法総論 第6版』

ホンとの本

『はじめての刑法総論 第6版』
尾崎哲夫
自由国民社
\1260
2008.4

 裁判員制度開始のカウントダウンが始まって、法律関係の本が注目されている部分がある。しかしこの本は、最初は1999年に発行されている。その後の法律の変化や社会的解釈の状況などに合わせて、内容を検討しなおしてここまで第6版というのだから、なかなかのものだ。
 表紙には「3日でわかる法律入門」だとか「法律をあなたの「お友達」の1人に」などといろいろ誘い文句が記してある。
 たしかに、読みやすい。図解も多く、それも、概念把握のための整理としての図なので、理解のためにも効果的であると思われる。また、用語の解説も様々手を尽くしてあり、法律についてまともには何も知らない私のような者にも、ポイントが押さえやすくされていたのはうれしかった。
 いろいろ、ケースつまり事例を出してきて、それの解釈に法律を適用して、という形での解説はよくあるものだが、それだと、分かったような気にはなるものの、なぜだ、というところで腑に落ちないものが残るのが普通である。そこへいくとこの本は、まず徹底的に用語の理解にこだわっているところもすごいが、刑法の適用の原理というものを十分見せてくれる点が、類書と違い輝いている部分ではないかと思う。法学生がきっちり学んでいくであろうような、概念理解を進めている。諸説ある解釈については、それらを公平に掲載していると言ってよいだろう。
 洒落ているのは、表のようなまとめにもだし、本文にもそうなのだが、突然手書きのラインや囲みが入り、同じく手書きで注釈が入っているところである。十分目立つし、そこに理解のポイントがあるのもよく分かる。
 法に素人の私たちは、えてして情で動こうとする。しかし法というのは、情など一切関係ないところで、一定の論理を伴いつつ、判決を下すための、カノンなのである。その仕組みが、この本によって、なかなかよく分かりやすいように仕上げられている。
 テレビの法律バラエティの類では理解させてもらえない、刑法の原理を理解するのに、まことに軽快な一冊である。




Takapan
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