本

『子どもはなぜモンスターになるのか』

ホンとの本

『子どもはなぜモンスターになるのか』
スー・パーマー
青木創訳
小学館
\1890
2007.10

 有毒な子ども時代、というふうな原題を、どうしてこんなふうに疑問形にするのだろうか、と訝しく思う。その手の本がヒットするからというネーミングなのだろうか。まして、モンスターという語など、原題にないばかりか、内容的にも子どもを怪物扱いするようなところは、見られない。扇動するかのようなタイトル付けには、疑問を覚える。
 イギリスの教育評論家であり、教師経験もある定評ある著者らしい。子どもたちにとって何が毒となるのか、という観点から、あたかも環境ホルモンの研究でもするかのように、身の回りにあるなにげないことでありつつ子どもたちをじわじわと変えていくものについて、説明を施していく。
 さまざまな知恵が全部で232集められている。そのすべてを実行するのは難しいが、なるほどと思えることが多い。また、すでに気にして実行していた、というものもある。
 食生活から、心のふれあい、学校との関係、テレビや情報技術とのつきあい方などが問われていく。それは、全体的には厳しめであるようだが、私から見れば、適切なアドバイスであるように思える。
 本書には、日本における状況が、頻繁に登場するのがありがたい。イギリスではもちろん、フランスや日本における子どもたちの置かれた状況を、的確に把握して、どれが良いとか悪いとかを決めるためにではなく、それぞれの子どもたちが微妙に違う状況に置かれつつ、共通の問題をはらんでいることが、説得力をもって語られていくのである。
 また、頑固親父のように、新しいものをなんでも否定しようとするものでもなく、新しい時代の状況をどう活用して、何に気をつけてゆけばよいのか、そういう視線を強く感じる本である。希望がなければ、そこには語る価値がない、というかのようだ。
 親子のコミュニケーションだとか、地域社会のつながりだとか、言っていることは、至極あたりまえのことのように見えないこともない。だが、そうした基本に戻ることが、つねに大切だというのも、人生の真実である。スランプのときほど、スポーツ選手は、基本に戻るではないか。
 子どもたちを守るというのは、「解毒」として項目が挙げられている。これが原題の流れに近いだろう。だが、日本語訳で、なぜモンスターに、と問うておいて、章末ごとに「解毒」と掲げられても、ピンとこない。せっかくよい教育書なのに、こうしたところに、残念な思いを抱いてしまう。




Takapan
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