本

『風をとらえ、沖へ出よ』

ホンとの本

『風をとらえ、沖へ出よ』
チャールズ・リングマ
深谷有基訳
あめんどう
\1800+
2017.1.

 原著は1994年に出版された。副題は「教会変革のプロセス」とあり、まさにそれが目的のようなものである。本題のほうは、それの印象的な表現だと受け取れる。20年以上を経て、ようやく日本語訳に漕ぎつけた。それほどの時を経て、いったい新鮮みがあるのだろうか。とくにこれは、著者自身言っているように、ひじょうにラディカルなもので、当初は誰も受け容れてもらえないだろうという思いもあったという。それが、各国語に翻訳をされて拡がり、いま2017年になり遅まきながら日本にそれがやってきたという具合である。
 教会は変革されなければならない。でもどうやって、どのように変革するのか。著者は、社会の底辺に置かれたような人々と共に歩むことをもし、神のことばに生きる生き方を実践している。そこから見て、口先ばかりで神学を称え、かつての姿からちっとも変わろうとしない教会の姿に、組織においても精神においても、耐えられない思いがしたのではないかと思われる。
 私は怠慢をすると言われてもよいが、本のカバーの内側に書かれていた紹介に魅了されたので、それをご紹介する。
 
 教会は変革を嫌う。それでも、教会の変革は急務だ、とリングマは訴える。それは、教会が自らの制度的仕組みに突き動かされ、人々を疎外しているからだ、と。ではどうしたら教会はそのような本末転倒から解放され、人々をエンパワーできるのか。本書はそこで、神学的な「教会論」や「成功する教会モデル」といった「答え」を与えてはくれない。むしろ、変革の必然性、政治学、障壁、聖書の読み直し、実践などのテーマから新しい「問い」を提供し、読者自らが考え、責任ある変革の担い手となることを励ます。
 宗教改革から500年の年、共に考えたい。教会は変革されつづけることができるのか――。
 
 如何だろう。出版社だからさすがということもなかろうが、実に的確に本書の内容をコンパクトにまとめている。「答え」を与えてはくれない、と記されているが、読めばそれなりに方向性は定まる。かなり具体的な方策も盛り込まれている。もちろん、システム的な具体策があるわけではない。具体例はむしろ、変革を拒む従来のあり方のほうが多いと言えるだろう。それは、いま普通の教会でどこでもなされているようなことである。だがそれでは教会は変わらない、福音がもたらされるものではない、と著者は情熱をかけて訴える。徹底的に糾弾する。確かに、そのくらい言わないと、伝わらないし、刺激も受けない。たぶん本当は、そんなに激しい言い方は好まないのではないかと思うが、執拗に、変わろうとしない私たちの精神の性質や教会の体質、ぬるま湯に浸かった妙な安定志向と自己中心、さらに言えば自らを神とするような危険性について、鋭く指摘する。
 実は、私もそのあたり大変共感を覚える者なのである。うんうんと本書に頷きながら読んでいる一クリスチャンは、もしかすると危険であるかもしれない。私は本当はそうは思わない。私は、福音を語れない説教者については、断固拒否を貫いてきた。イエス・キリストと出会っていない者は、いくら神学校を出ようが、中身は空である。いくら忠実に仕えようが、福音は語れない。そして、何かあると、化けの皮が剥がれる。そのくらい聖書の信仰については譲れないところを有している者なのであるが、しかし、教会が教会として、これまでと同じでなければならない、伝統だから、と判断中止ばかりしているのは、決定的に拙いと確信している。変えてはいけないものもあるが、変わらなければならないものがあり、時があると考える。それは急激であってはならない。人への愛を省き、自分の思いつきで振り回すようなことはあってはならない。だが、キリスト不在の教会というものだけは、我慢ができない。キリストを差し置いて自分たちの気分の安寧だけを求めるのは、もう教会ではない。それはキリストの敵であるファリサイ派や律法学者の類に陥るものである。そして、自らがそのように陥っていても、自分では気がつかないのが、その本当に怖いところである。自分と相容れない立場を直ちに異端と退ける精神も同様である。自分がつねにキリストと向かい合い、問いかけ、また呼びかけられながら、関係を保ちつつ導かれていくことは、ただ祈りの中だけの言葉であってはならないのである。
 こうして、私のラディカルさが、この本のラディカルさとかち合ったとき、さて、どちらがよりラディカルか、などと競うつもりはもちろんない。私はまた、四半世紀前の発想に基づく本書に励まされ、エンパワーメント、つまり、「人々の内にある能力、個性、可能性を肯定し励まし、それらを当事者自ら発揮していく方向性」を見出し、実践していく歩みを続けたいと願う。




Takapan
ホンとの本にもどります たかぱんワイドのトップページにもどります






 
inserted by FC2 system