本

『かんさい絵ことば辞典』

ホンとの本

『かんさい絵ことば辞典』
ニシワキタダシ・早川卓馬コラム
ピエ・ブックス
\997
2011.6.

 ふざけた本である。そして、文句なしに楽しい。
 いや、関西地方や、その言葉に好感をお持ちでない方には気に障るところも多いことだろうが、そうでなければ、楽しめる。特に、少しでも関西で暮らしたり、関西の友人との話を多くしたりしたとあれば、書いてあることが分かるだろう。テレビでも関西の言葉は多く使われているし、芸人の関西言葉が普通に流れているから、耳にしたことがまるでないという人のほうが珍しいだろうから、概ね「あるある」と思えるような内容となっていることだろう。
 基本構成は、1頁に上下二つのイラストと、二つの単語。その意味と用法が見れば分かるようになっていて、いたってシンプル。そのとぼけたイラストが、そのまま笑いをとるようになっていると思うし、またそういう笑いをとることは、関西人のDNAに刷り込まれている、とする説明があるなど、コラムが充実している。
 辞典ではある。だから、言葉の意味が説明されている。だが、それだけでは「おもろない」。めいっぱいパンチの効いた、まさにこの本そのものが、「かんさい」なのだ。そして、言葉だけの説明などではなく、関西文化というものについて考えさせてくれる。それも、学術的なものなどではない。その笑いの精神、会話や生活の日常がそもそもどういうものであるのかを明かしてくれている。あるいは、関西の人自身、こんなこと意識すらしないというほどの、当たり前のことかもしれない。だから、関西の人が読むと、膝を叩いて「そや、そや」と連発しそうな本であるのかもしれない。「ほんま、いわれてみればそやね」と目を細めつつ、「そやかて……」とまたその人なりのオチまで付け加えんと気に済まないであろうような関西人の本能まで、この本では暴露されているから、それがまた面白い。メタ構造がどこまで続くのか、見当もつかないほどである。
 楽しいクイズや息抜きアニメ、おこのみやきレシピなど、エンタメとしても徹底している本であり、これだけ笑わせてくれてこの値段は安いの一言に尽きる。
 そしてちゃんとオチまであったというのが、巻末の196ページから。やはりオチなので、これはここで明かさないほうがよいだろうと思う。「そんなもんまで、あったんかい!」と思わず本に向かって吠えてしまう出来である。
 なお、ことばには「・」でアクセントが記されている。これひとつで、確かに関西の言葉だという気になる。笑かすというのは、実に細かいところまで配慮しているということに、ほかならないのである。




Takapan
ホンとの本にもどります たかぱんワイドのトップページにもどります






 
inserted by FC2 system