本

『紙の歴史』

ホンとの本

『紙の歴史』
ピエール=マルク・ドゥ・ビアシ
丸尾敏雄監修
山田美明訳
創元社
\1680
2006.9

 知の再発見双書129である。
 小型ながら、美しい写真や資料の数々と、良質の紙による製作で、魅力的な本となっているシリーズである。
 まさにビジュアルな、「絵で読む世界文化史」というふれこみだが、実際は読ませるべき内容の文章が、小さな文字でたくさん含まれている。とはいえ、たしかに写真や図版が多いので、見て楽しむことができるのは間違いない。
 紙。古代エジプトのパピルスが英語の語源だとか、中国で発明されたとか、コンピュータ社会でなくなっていくという人もいたとか、それなりの記憶は頭をよぎっていく。だが、歴史を調べればそう簡単なものではないことが明瞭になる。
 そもそも、紙とは何のことをいうのか。
 紙は人類の文化をどう変えたのか。木簡や羊皮紙にしたためていたことと、何がどう違うのか。
 説明は後からなら、どうとでもつくかもしれないが、たしかに紙というテーマは、人間の歩みを捉えるに相応しい素材であろう。
 古い貴重な資料も、豊富に掲載されている。見ていて楽しい。
 個々の問題には、深く立ち入っていないけれども、それは読者の探求に任せている。この本をきっかけとして、どこからでもどのようにでも、深く進むことのできるように、入口があちこちに設けられているのである。  そういう本は、実はたいへんありがたい。




Takapan
ホンとの本にもどります たかぱんワイドのトップページにもどります






 
inserted by FC2 system