本

『回復への道』

ホンとの本

『回復への道』
リック・ウォレン
PDJ編集部訳
パーパス・ドリブン・ジャパン
\1600+
2005.9.

 サドルバック教会を築き、育てた牧師リック・ウォレン。その教会成長の秘密については多くの人が尋ねたくなるだろうし、それに応える本も出版している。しかし、問題は教会が成長することではない。教会は建物ではなく、人である。人がどうやって集うのか。人がどうやって神に出会い、救われるのか。
 その過程は、文化的背景が違うために、日本においてそのまま役立つ方法だとは思えない。だが、同じ人間である。人の心はどのように捕らえられるのか、神を信じるきっかけにはどういうものがあるのか、私たちは知りたいと思う。さらにまた、アメリカの場合ではあるが、人生で失敗をし、あるいは人生がだめになるというところにまで行った人が、健全な人生に戻るということ自体が、キリスト教や教会につながるという道であることもしばしばである。そこで、この本では、人の傷や痛みがどのようにして回復するのか、そこに焦点が当てられている。そこをリカバリーすれば、アメリカの場合には、教会に足が向くというのがひとつのコースとなりうるからである。
 人々がどんなことに傷つき、不適切に道に舞い込むのか。そこから抜け出すにはどうすればよいのか。それを一つのプログラムにしていくというのが、この著者のアイディアである。一人ひとりの悩みを聞いて癒しを求めるということばかりを続けておれば、何千人何万人という人の魂を導く立場にあってはやっていられなくなるからである。そのことを、モーセが一人ひとりを裁いていたところを舅が知恵を与えたという旧約聖書の記事をひとつのヒントとして、ここでは、プログラムというものが想定され表に出されたのである。
 その一つひとつをここで挙げはしないが、それは8つあり、著者に言わせると、そのことが偶々、山上の説教の8つの幸福につながる、あるいは基づくのだという。その過程はともかくとして、イエスの授けた8つの幸福が、いまも人の幸福の8つの導きになっているという点では申し分のない設定である。
 現代風に、それが活かされる場面がある。それが、リック・ウォレンの主張である。そのために、サドルバック教会での実際の活動やそこでその教えから救われた人々の証しなどが掲載されている。本は一読すれば、何を言おうとしているか、どうすればよいのかが分かる。だからまた、おそらくアメリカでもよく売れた本であることだろう。
 どこか、日本においてもちょっとしたスピリチュアルな本で、本当に自分に出会えるとか、自分の中の輝くものを取り出そうとかいう、精神的な啓発書に出会うが、それが日本でもわりと売れるように、アメリカでも、よく売れるということなのではないか。しかしそこには聖書という文化が流れている。聖書という権威から発するものが結びつくならば、これがいわゆる神の働きなのか、と我が身で体験することにより、しっかりとした信仰をもつようになるものなのかもしれない。
 ひとは弱い。弱くて当然である。それは否定できない。しかしそこにこそ、神の力は働く。弱い自分を恥じる必要はない。ただ、なにかしらの方向転換ができればいい。神の知恵を戴こう。神の力に従おう。それは確かに信仰の道であるのだが、人が人として回復する道でもあるのだ。
 本当の自分に出会う、という言葉が麻薬のようにも用いられる日本であるが、この本が導こうとするのは、そんなものではない。まずは教会関係者が読むとよい。教会で傷つき、苦しい思いをしている人が、ストレートに効く薬であるかもしれない。また、教会が誰の何をケアしなければならないかを知りたいという人にも、相応しいかもしれない。読みやすさと、実行への励ましとして、確かにアメリカで受け容れられただけのものはある




Takapan
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