本

『じゅんぺー先生の世界一わかりやすい英語の本』

ホンとの本

『じゅんぺー先生の世界一わかりやすい英語の本』
じゅんぺー先生
西日本新聞社
\1365
2007.2

 タイトルのような「世界一わかりやすい」というのは、人目を惹くせいか、なんだかんだとよく付けられている。公正取引委員会から干渉がこないかと思われるくらい、誇大広告である。
 そんなことはどうでもいいが、私は、本来算数や数学を教える立場にあるにも拘わらず、諸事情で、英語を担当することもある、というところから話は始まる。
 困っていた。私は、英語の成績がよかったわけではない。ただ、理屈は自分なりに悟っている。ドイツ語やギリシア語も少しかじるなどしていくと、英語とはどんな言語であるのかが、ぼんやりと見えてくる。従って、ただ暗記せよなどと言われていた英文法に、どんな意味があるのか、自分なりに掴んでくることができたように思う。
 その私の実感を、生徒に教えれば、英語の成績は上がる――少なくとも、英語が分かるようになってくるはずだった。
 ただ、私には戸惑いがあった。しょせん自己流の理解である。その理解でよいのか。そんな理解を生徒に教えることが許されるのか。間違っているのではないか。そんなためらいのために、自分の理解を強く教えることが、できないでいた。英語ができない私なので、すべてにおいて自信がなかったのだ。
 ところが、である。この本は、実に画期的な本であると共に、私が理解していたのと、ぴったり重なることが、驚くほど多く書かれているではないか。もう、面白くなって読み進んでいった。
 河合塾で、英語などを教えて評判になった講師である。受験のための小手先のテクニックを生徒にたたきこむだけの授業ではないはずである。「なるほど、英語とはそういうものだったのだ」と合点できるようなことを教えなければ、そのような意味での評判はとれない。逆に、英語とは何かを伝えられたからこそ、学生は、受験に成功していったのである。
 私の英語理解は、決してたんなる独我的なものにすぎなかったわけではない、と、この本によって強められたような気がした。
 もちろん、私の知り及ばない点も多く言及してあった。しかも、古い英語を持ち出してきて理由を説明してくるあたり、びっくりすることが多かった。でも、だからこそ、なるほど、と肯けることが多かったのも事実である。
 私の高校のときにこの本があったなら、私の人生は変わってきていたことだろう。今にして熟知したことが、当時に理解できていたとなると、英語を利用して違った歩みをしていたことになるかもしれない。
 Nexusを主軸として文型を重んじた徹底理解がなされる。そしてね前置詞のイメージが説明される。実に明瞭な説明である。
 私は決してこの本が「世界一わかりやすい」とは思わない。英語をかなりやった人でなければ、読みこなせないだろうと思うからであるし、そもそも英語を使う文化とはどういう考え方をするのであるか、を明らかにする点では、決して浅薄なものではなく、重厚な文化理解を私たちにもたらしてくれるものに違いないからでもある。
 どうして英語ではこういうふうにするのだろう、という疑問が、原理的に解決される本である。そう言ってよいと思う。




Takapan
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