本

『依存症のすべてがわかる本』

ホンとの本

『依存症のすべてがわかる本』
渡辺登監修
講談社
\1260
2007.8

 何かに依存する。怖い話だ。誰しも何かに頼っているのは本当だろう。ここでは、それが病的となり他に害を及ぼすものが取り上げられている。
 対人依存・プロセス依存・物質依存症と分けられており、これが軽いドラマ仕立てのように説明される部分があるので、より生活に密着したあり方で理解することができる。見開き2頁に、解説とイラスト、図表イメージがふんだんに並べられており、じっくり読むというよりも、見るという感覚で、理解しやすい配慮ができている。たしかに、たんに文章でだらだらと書かれていれば誤解が少ないなどということはないのであって、見た瞬間に、そうか、と分かるように伝えることも必要であろう。
 対人依存には、世話型依存や職場依存も含まれる。また、プロセス依存は、仕事依存や買い物依存、オタク的なものやギャンブルへの依存がそれにあたるという。そして、物質依存では、アルコールや薬物もそうだが、たばこに過食へも洞察が及ぶ。
 これをどう回復へ導くか。依存症は、本人が否認する傾向があるといい、まず自覚が必要であるそうだ。だが、治療法は一筋というわけにはいかない。どんな面があるか、紹介がしてある。
 イラストが効果的で、類書の中でも、実に分かりやすいものの一つであった。深い専門的な解説がしてあるわけではないが、身近な家族として、どういうことに気をつけていればよいのか、一目で分かると言ってよい。また、それがどういう背景に基づいているのか、についても多様な知識をもたらしてくれる。
 かといって、素人が、これに違いない、と即断するのも考えものだが、誰もが関心をもち、理解をもとうとする心を育てるためには、恰好の本ではないだろうか。そして、また誰もが、この中にあるどれかに自分が入るという思いを抱くであろうことも、予想される。まさに、自覚していないのが特徴なのであって、私たちは、自分の姿をもっと正面切って見つめようという思いをもつべきなのかもしれない。それは、人間にとって、難しいけれども、必要なことであるのだ。あまりにも、それを避けてはいないだろうか。
 見ていて厭きない。本の制作のためにも、よい見本となるような気がしたが、そういう感想では、失礼にあたるだろうか。




Takapan
ホンとの本にもどります たかぱんワイドのトップページにもどります






 
inserted by FC2 system