本

『イモムシハンドブック』

ホンとの本

『イモムシハンドブック』
安田守著
高橋真弓・中島秀雄監修
文一綜合出版
\1470
2010.4.

 樹液に集まる昆虫と一緒に図書館で借りた。
 これも、薄い。個人で買うには実に高価に感じる。
 まして、相手はイモムシである。これだけのイモムシの写真が集まった頁を開くことは滅多にないし、見るだけで思わず背筋が冷たくなる人もいるだろう。目を背け、本を閉じてしまう人も少なくないだろう。
 だが、よく見ると、イモムシたちは、実に愛らしい。将来美しい蝶になるから、という思い入れも人間の側にあるかもしれない。だが多くはまた、あまり美的センスを感じない蛾になるものであるから、親の姿との比較だけで私たちは考えているのではないだろう。
 図鑑としては、このイモムシの全体像と、顔のアップ、成虫を比較参照し、そして蛹もはっきりと示してある。それぞれの写真が、実物と比して何倍の写真であるのかまで明記してあるので、判別にも役立つ。もちろん、さまざまな特徴や特筆すべき性質についても簡潔に十分な量で記してある。
 実によくできたハンドブックである。
 それに、そもそもこれだけの種類のイモムシがいるのかということにまた驚かされる。たしかに、蝶や蛾の種類がゴマンとあれば、それだけの種類のイモムシがいるはずである。だが、私たちはそれほどの量のイモムシにお目にかかるわけではない。時に気味悪く、時に美しく、時に思わず撫でてみたくなるような、さまざまなタイプのイモムシがいることに気づかされる。気づかされるだけでも、この図鑑を一度見た意義は大きい。
 探す時に便利なように、とにかくイモムシの一覧写真が最初に並べられている。この頁が、抵抗ある人には厳しいものと思われるだろうが、なんだかユーモアたっぷりに見えてもくるから不思議である。ウミウシを思わせるような美しいものもいて、ぜひ出会いたいとも思えてくる。
 だが、何を食すかという説明の中には、ちょっと引いてみたくなるのもある。セミヤドリガは、アブラゼミなどの蝉の体液を吸って生きるとある。
 人もまた、見た目がさまざまである。それぞれがそれぞれの趣味や好みをもち、しかしまたよく見ると可愛いところがあったりもする。イモムシが単なるイモムシだけに終わらないような気がしてくるというのが、この本の隠れた目的であるようにも思えてきた。もちろん、そんなことはないはずなのだが。
 まずは表紙だけ見て、そのかわいさを感じとってみられたら如何だろうか。




Takapan
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