本

『池上彰の「世界がわかる!」』

ホンとの本

『池上彰の「世界がわかる!」』
池上彰
小学館
\1260
2007.10

 一年前から『週刊ポスト』に連載されていたものをまとめ、あるいは加筆したもの。副題に「国際ニュースななめよみ」とある。
 あまりにも深く読み込むという意味ではないようだが、この「ななめよみ」さえ、私たちはあまりできない。ニュースで、外国で何が起こった、と耳にしても、その背景の事情を知ることがないと、「またテロか」「また頑固に自己主張通そうとしているだけか」のような印象で、実際何も理解することなく、日々を通り過ぎていく。
 一年前からの事情なので、ホットではない部分があるかもしれない。その当時に起こった出来事の背景が解説されているのだから、週刊誌の中で読めば最高であるのは確かだろう。しかし、こうしてその記事をまとめて見ていくと、世界がどういう論理で動き、そこに住む人がどういう息吹の中で暮らしているか、貧しい想像力の持ち主の私にも、いくらか姿が思い浮かぶような気がして部分がある。
 世界のために祈る、などと言いながら、国際理解をまったくしていないようなクリスチャンではありたくない、という思いから、この本を開いてみた。
 限られた時間では、全部を読みとおすことができなかったが、簡潔なその報告の中で、そうなのか、と膝を叩くような思いを抱くことが幾度もあった。
 たしかに、「ななめよみ」なのであろう。私たちは、このようなレポートから、さらにもっと具体的に、もっと根本的に、その国の人のことを考えていく必要があるのだろう。しかし、まずこの「ななめよみ」ができないことには、何も始まらないのだ。
 できるなら、これは毎年出版を繰り返し、世界がつねに分かるようにして戴けないだろうか、という気がした。
 著者は、NHKでおなじみだった「お父さん」であったし、子どもたちのために世界情勢や社会のしくみを実に易しく的確に教えてくれる本をこれまでにも目にしてきたものだから、これほどハードなレポートというのが、ちょっと新鮮であった。
 外国では、取材すら命懸けである。現地で人の生き様と触れあう、ジャーナリズムの原点からの視点を、私たちはこうしてせめて受け止めるくらいの礼儀はもちたい。自分とは関係ない、という思いほど、傲慢なものはないのだ。




Takapan
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